抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

下ネタだらけで大爆笑ラブコメ「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 映画館初め3本立ての2本目。また、池袋シネマ・ロサも初訪問でございました。

 BANGER!!!(@BANGER_JP)さんの1周年アンケートに答えた結果当選したムビチケ(2人分なのに1人)を使って鑑賞させていただきました。ありがとうございます。こんないい映画、実質タダみたいなもんなのに、本当にタダ!!

Long Shot [DVD]

WATCHA4.5点

Filmarks4.7点

(以下ネタバレあり)


1. 下ネタ炸裂、でも気品もある

 元々アメリカのロマンティック・コメディとか、ラブコメっぽいやつが非常に苦手でしてね。選んだ作品が悪いのかもしれませんが、「ラブ・アゲイン」とか噴飯ものでしたし、「なんちゃって家族」とかも下ネタの酷さでは共通部分多いんですが否定派でした。

 ところがどっこい、今回の作品は大好きに。多分私史上最高のラブストーリーじゃないでしょうか。

 ラブコメを展開していくうえで重要なのは、この2人を応援したいと思えるかどうか、そして立ちはだかる障害だと思うんです。その点でいうと、マッドマックスを見ておらず、「ヤング≒アダルト」や「タリーと私の秘密の時間」のイメージがあるシャーリーズ・セロンはまず最高なんですよね。「アトミック・ブロンド」も見たハズなのに武闘派よりも演技派で口の悪い人って感じで。ということで、シャーロットは無条件で好き。そして、不勉強ながら正直良く知らなかったセス・ローゲン演じるフレッドも冒頭のネオナチ潜入取材と、会社買収に伴う辞職だけでキャラクターとそのユーモアセンスを完璧に見せつけてくれる。これでもう2人を応援する素地は整っているわけです。

 そこに障害として立ちふさがるのがこれまたいかにも悪そうな顔のウェンブリーというメディアの社長と既存の政治ですよね。本作のスタートでありゴールはシャーロットが大統領選に出馬すること。その為に現職大統領がいくらバカでもいうことを聞かなきゃならない、という権力関係。そして社長はストーカーかよ、というぐらいしつこくシャーロットとの面会を申し込んでいる。悪役の設定と提示がスムーズなのでシャーロットとフレッドの恋路が進むたびに、いつ撮られるのかな、脅されて別れよう展開なのかな、と気楽に見れるんですよね。物語が非常に平易に、しかし巧みに作られていたんだと思います。

 んで、ここまでだけ見るとふっつーのプリンセスものの男女逆転版なだけじゃね?感が否めないんですが、まあ酷いのが下ネタの数々(褒めてますよ)。Fワードとかそういう次元じゃなくド下ネタが飛び交う訳で。真顔で言うから笑ってしまう。でも、「好きな体位は?」とフッたら照れるフレッド、みたいな描写が入っていることで2人が結ばれた時には下衆い感じもしないで爽やかに見れる。まあベッドシーンも早漏ネタですが。

 んで、挙句の果てには物語のカギを握ると予想された脅迫ネタがフレッドがシャーロットをオカズにして自慰していたら顔面にかかった動画ってwwwwwこんな重要な場面でこんなばかばかしいものを見せられるとは思っていませんでした。

 ただ、不思議なことに下ネタを連呼していようと仕事はきっちりこなしているし、ちょっと「ローマの休日」的にお出かけしたら、ドラッグ飲んでハイになるとかやっても人質外交を成立させているしで、爛れたりおろそかになっていないから品格が保たれているんですよね。まあ保たれないまま大統領になられても困るとは思うんですけど。

 まあそんな2人ですが、何より「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」で撃たれたニック・フューリーをガチでハラハラしているシャーリーズ・セロンが嫌いな男がいますか!?言われた通りにあらすじで済まさず「ゲーム・オブ・スローンズ」を見るシャーリーズ・セロンが嫌いな男がいますか!?多分2人はアメリカのどこかでエンドゲームを見て一緒に泣いてるし、スパイダーマンFFHでフューリーがタロスだったのを知って一緒にびっくりしているはずです。今も「ブラックウィドウ」を楽しみに待っているはずです。ああ、彼らのそんな妄想をしてしまう程度には彼らが大好きになってしまったし、してしまう力のある作品なのです。

 しかしMCUもGOTも見てないとついていけないんですか、世間は…。MCUは見ておいて良かった…。

2. 分断ではなく連帯を。ハラスメントではなく支え合いを。

 じゃあこの作品のメッセージは、娯楽性を取り除くとただの女性エンパワーだけなのか。それは違います。勿論、そういう側面はあることは否定しません。映画内で挿入されるトーク番組でパワハラ、セクハラを繰り返した2人コメンテーターに、司会の女性がシャーロットの出馬演説を援用してI quit!と番組を止めるところは痛烈です。でも、これは立場が逆でもそう。ハラスメントに対して上がる声は抑制すべきではないとした上で、互いに支え合うことを求めているといえます。

 そもそも、フレッドが採用された理由もユーモアのあるスピーチライターが欲しい、という理由でしたし、その後にフレッドが提出するスピーチ原稿も詳しく描写されている訳ではありませんでしたが、クビにもされていませんし、彼はきっちり仕事をこなしていたことになります。互いが互いの仕事を尊敬して振る舞うし、フレッドは地球を救うシャーロットを助けたい、と宣言していたのを友人との一件を経て、相手の立場に立って考えることを学びます。そして最後はファースト・ミスターとして新大統領のシャーロットを支えることを表明している訳です。勿論そこにもネタは欠かせませんでしたが。

 また、もう一つ大きなテーマは連帯でしょう。そもそもが、ハチ・森・海計画みたいな名前のシャーロットの環境再生プロジェクトの合意国を100か国にするのが重要な目
標であり、その為に世界中を旅した訳です。これ自体が世界全体で連帯しよう、という意味にもなりますし、先述のフレッドの友人との一件は、政治信条や肌の色は関係なく、俺とお前の関係を大事にしよう、というメッセージであり、これもまた大きく同意できる部分。恋が成就してやったー!ではなく、恋が成就するうえでのハードル設定が非常に現代的だからこそ良かったのだと思います。

 最終的なシャーロットの決断が、経歴ロンダリングしたフレッドではなく、ありのままのフレッドでいいとしてかっこよくマイクを投げ捨てていくサイコーの展開。ああ、シャーリーズ・セロンと幼馴染だったら良かったのに…。