抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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現代的意義のある続編に!「ぼくらの7日間戦争」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は七→7に変更となって、実写をアニメーションにしたリメイク的続編。「ぼくらの7日間戦争」の感想です。宗田理先生の原作は読んでいませんが、今作でも登場する宮沢りえ主演の実写版はずいぶん前に鑑賞済み。

劇場版アニメ ぼくらの7日間戦争 (角川文庫)

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

(以下ネタバレあり)

 

1.大人vs子ども…?

 実写版「ぼくらの七日間戦争」では、あまりに理不尽な教員たちに反抗する形で工場に立てこもった中学生たちが大人を痛快にやっつける、そんな展開が痛烈で爽快であると同時に、理不尽なのは教員なのに、攻撃されるのはお仕事を全うされている機動隊の皆さんで少し可哀想なところもありました。

 そんな中での本作。まず、設定を現代にしたせいで単純に反抗する対象が減っているんですよね。この現代において、かつての実写版のような教員がいたら、教育委員会や警察に駆け込むのが有効です。それすら許されなかったのが30年前な訳です。そう考えると、良い時代になりました。必然、戦争という名の立てこもりに入る推進力は弱くなります。まあ親がアレだから逃げよう、の流れは「打ち上げ花火」なんかを思い出しますね。

 登場人物を高校生にしたことによって、世界史を応用した作戦立案もムリがない、とは言いませんが中学生ほど突飛ではなくなりました。その代わりに、不法移民の子であるマレットを登場させることで、更なる子どもの存在を明確化し、高校生という年代の持つ子どもと大人の両方の側面を浮かび上がらせました。また、現在の入国管理局行政を見れば明らかですが、彼らの人権無視っぷりはすさまじいのは隠しようのない事実。高校生たちも不法行為や闘争行為を行ったり、マレットが入管に追われること自体は仕方がないですが、そこに情が湧くようなシステムになっています。

 そこに持って、家出の動機である議員の父を中心とした追い込んでいく大人側もやや類型的なきらいがあるとはいえ、嫌な奴としてちゃんと描いているので彼らが炭鉱のギミックを駆使して出し抜かれる様子もそこまで可哀想に見えないんですよね。

 そして実写版での切り札の戦車。これも流石に現代では無理がある。そこで繰り出された最終奥義は絵的なカタルシスも含めて良かったですが、これは後述。

 最後には、議員の設定していた「目上の人間の言うことに従う」=大人とその大人の定義からはみ出す子どもよりの大人、守の定義した「自分を守るために嘘をつく」=大人を拒否した大人よりの子ども、そしてマレット=子ども、という4階層に分かれたことで世代間対立チックになりました。あんな父親いねぇ、なんて声も目にしましたが、うん、うちの父は子が親の言うことに逆らうとは何事だ、なんて普通に言う人間なので正直ちっとも違和感はなかったですね。

2.自分vs自分

 実写版が権力闘争の色合いが濃く、最終兵器が戦車なのも武力衝突の象徴としての戦車が必要だったからでしょう。そういった意味で言えば、今回の7日間戦争は権力との、あるいは大人との闘争でもありますが、自分との対話でもありました。

 いつまで経ってもありのままの自分をすべてさらけ出す訳にはいかない。どこか隠していることがある。そんなことは当たり前です。
秘書の行為によってSNSで身元バレをされたメンバーはそれぞれ信じられなくなっていき、諦める。そこで守の千代野さんへの告白をきっかけとして本当の自分をさらけ出せるチームになる。千代野さんの告白は現在だから描けるものでもありますし、高校生でこのカミングアウトをした千代野さんの勇気は凄いと思います。勿論、結果的に彼女に勇気を与えた守も立たせられる訳です。それからいい子キャラの未来の弁護士くんですが、最初の抵抗の時にレールに沿って進むトロッコを操作していたのに失敗して、トロッコがレールを外れてしまいます。なんていうか、この辺でうまいこと彼の心情をちゃんと描写できているわけですね。

 こうした告白を経て、初めて、嘘をつかない子どもでいることを選択し、彼らは逃げるために建物の中と、地下を使用していたのに、屋根を開けてはばたく訳です。ここが先ほども言及した絵的カタルシスにして、最終兵器の石炭ガス気球。この場面や信頼の崩壊を劇的にするために前夜が都合よく使われている気もしますが。

 また、今回の舞台が閉山した炭鉱であったことにも意味を感じます。当然、戦争は単独ではできません。大人たちにとっても7日間戦争なのです。それを考えた時に、かつてそこで働いていた山咲父率いる建設会社や地元の市議会議員である千代野父がこの炭鉱と対峙するのは過去の自分、かつて自分にもあったはずの守たちの年頃との改めての対峙だと考えられます。だからこそ、建設会社は千代野父に泥を投げつけることが出来るわけですよ。最も、最初に泥を投げつけだしたcv櫻井孝宏の秘書は個人情報を勝手にSNSに流してるんで、その時点で許されてはならない存在になってますけどね。個人的には、それがバレて東京に行く話も無くなればいいのに、と思いましたが、千代野父への攻撃はカツラと泥だらけで済んでしまいました。

 と、いう訳で今回の7日間戦争は、子どもサイドも大人サイドも自分の中の子どもと大人を戦わせる、そういう自省的な話でもあったと思います。どうしたって「君の名は」的な音楽使いなど、どこかで見たような、感のある演出も多かったですが流石信頼できるオトコ大内一楼といったところでしょうか。