どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。
遂に見て参りました。話題沸騰の中国によるアニメ作品。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でも注目映画として藤津亮太さんも時間を設けて言及されていましたが、これを見ないで今年のアニメ映画を語れない!というレベルらしい。「ディリリとパリの時間旅行」こそ見逃しましたが、各国のアニメーション映画を見ている今年。中国代表ともしっかり相まみえてみようではないか、と中々出向かない池袋にて鑑賞です。いやー、行って良かった。
WATCHA5.0点
Filmarks5.0点
(以下ネタバレ有り)
1.圧倒的な可愛さと両立するカッコよさ
まずは何を言っても主人公となるシャオヘイの可愛さですよ。冒頭は森を追われる小さい黒猫として登場して、精霊としての姿やヒト型は暫く登場せず台詞も無い状態。前情報なしで見てたので、ちょっと不安だったんですよ。音無しパターン?それは眠くなるかも…なんて思ってたんですけどまあそんな心配も不要でした。ただ、そうした不安をまず払拭してくれるのがシャオヘイの可愛さ。猫としても可愛いし、ヒト状態でも可愛い。個人的な印象としては、継続的にチェックしていないとはいえ、妖怪ウォッチやシンカリオンなどの日本の最新児童向けアニメのキャラクター感を持ちつつ、手塚治虫作品のような(私はブラックジャックのピノコを連想しました)佇まいを持ち合わせていて。
これが猫状態で
これがヒト状態。これで美味しいもの食べたら瞳が星になったり、そういう抜けた瞬間のギャグもできたり、何度もムゲンの下から脱走しようとして失敗するむくれ顔も見せたり。可愛い以外のコメントが無いですよ。ええ。
ところがですね、このシャオヘイ、ちゃんと終盤のバトルシーンになるとカッコよくなる。そもそもキャラクター的なカッコよさ自体は、軸になるフーシーとムゲンに強めに与えられていますし、彼らのアクションの場面はこれでもかと動きまくり、目が追い付かないレベル。各々の持つ属性による攻撃をするんですけど、それは割と絵で分かりやすく見せてくれる。
それから、猫型のシャオヘイ見ても分かるように、キャラクターは外枠の線がちゃんとあるんですけど、背景の自然の絵とかは去年Netflixで見た「紅き大魚の伝説」なんかでもあった、あるいは今年の「ロング・ウェイ・ノース」で見たタイプの省略や境界の曖昧さを持って描いている。そしてギャグのシーンになると思いきった省略をすることで、会話だけでなく絵でも緩急をしっかりつけてくれる。
最後に登場する城は千と千尋の世界観も感じさせる美しさも併せ持ち、なんだこの全方位外交最高かよ、とアニメーションだけで大満足でした。
2.私の大好きが詰まった物語
今作は正直、ストーリーとしては割とありきたりな面も否めません。ただ、要素要素で言えば個人的に大好きなものの集合体になっていました。
まずもって、端的に言えば居場所を奪われた無垢なシャオヘイを助けたのがエコテロリストで、襲ってきた敵と旅したら、シャオヘイが善悪や能力を学んでいく、という話。すっげー省略してますけど。これって先のテン年代ベストテンにも挙げたニール・ブロンカンプ監督の「チャッピー」と非常に近いんですよね。あれは真っ新なAIをギャングに育てさせてみた、という設定で育ての親が実は悪い、というパターンは大好物でして。あー、もうたまらん。まあ、劇中でムゲンが指摘しているように、フーシーたちと一緒にいた日時があまりに短く、ムゲンと過ごした時間と想い出の方が明らかに多いので最終的にムゲンよりになってしまうのも頷けますよね。
其の上で、対立の原因がまあわっかりやすく自然と人間の共存を巡る自然側の反撃、という話な訳ですけど、現在の中国でこれを製作する、ということを考えると色んな事のメタファーにもなっているわけです。
そもそも単純に急激な工業化に伴って、実際に自然破壊の問題が中国にあるのは事実でしょう。ジャイアントパンダの生息地も危ない、みたいな話も聞いた覚えがあります。ただ、それに留まらず、自然vs人間というだけでなく、排斥されているものvs覇権を握っているもの、という見方をすれば、香港や新疆ウイグル自治区の現状を思い起こすのは必然。多様な種類がある能力に関しても、当然中国内にいる漢民族以外の民族のことを示唆しているようにも見えます。こういう社会問題をしっかりテーマとして内包しているものもやっぱり大好物で。しかもそれを現在の中国で制作して、ちっとも説教臭くないという素晴らしさ。最高じゃないですか。
正直、シャオヘイが持っている空間属性の能力がどういう能力かよくわからないし、発動していないように見えたのにフーシーがどうやって見破ったのか、その辺は少し不明瞭です。でも、シャオヘイの能力の内容自体が重要というよりは、それの争奪戦な訳でいわばマクガフィンですよね。ん...?マクガフィン?ということでここで一曲。
えー、らしくない販促を挟みましたがThe CutやThe Great Journey並みに好きなコラボだったのでね。
ということで、まあ色々魅力たっぷりなんですけどとにかく見に行ってください。私の下手な文章で色々語るより、見ていただく方が100倍速い(すべての映画がそうですけどね!)
こういうものがこの段階で出てくると年末までに決めたい年間ランキングが変動して大変なんじゃ…。