抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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監督直々のネタバレ厳禁!だから公開されたら即劇場へ!「パラサイト半地下の家族」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。 

 今回は日本最速試写会で拝見した、今年のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作「パラサイト 半地下の家族」の感想です。まさかのポン・ジュノ監督降臨ということもありますが、大傑作でした。 

 監督直々にネタバレ禁止令が出ているので、つべこべ言わずに1/10の公開日を迎えたら、バンバン見に行って、バンバンこの先を読んでいただければ、と思います。

 いいですか、ここから先は自己責任ですよ!

Parasite (Korean Drama) (Original Soundtrack)

 WATCHA5.0点

Filmarks5.0点

(以下ネタバレ有り)

 

 

 

はい、2重にネタバレ防止策取りましたからね。知りませんよ。

1.とにかく最高のブラックコメディ

 単純な感想としては、完璧なブラックコメディ。似たような家族乗っ取りだとジョーダン・ピール監督の「アス」を思ってる人が多い気もしますが、それよりもかなりコメディより。というか、ホラー要素はゼロですね。

 まず始めに、ピザの箱の内職をしているソン・ガンホファミリーが映る訳ですけど、奥の方で狭い部屋で頭をぶつけるソンガンホとか、上の階の住人がパスワードを設定したせいで、Wi-Fi泥棒できなくなったギャグで笑わせてくる、と同時にしれっと貧困をすり込んでおく抜け目の無さ。

 そしてここから、偶然の紹介から金持ちの家に1人、また1人と入り込んでいく流れですが、ここは大学入学の文書偽造や、家庭教師としての初めての授業を参観されるという展開で、バレるかバレないかなのサスペンスの要素があるのにどこか滑稽。

 その究極形は完全に潜入しきって、家主の消えた一夜を過ごす弛緩しきった家族に訪れた地下室の衝撃、からの家主帰宅でテーブルの下で隠れてるサスペンスなのに夫婦がヤリだす。サスペンスなのに笑いになる。しかもここでも、匂いというファクターを出しておいてまたも抜け目ない。

 衝撃の地下室での場面、初見の時も男が頭をボタンに打ち付けてモールスを打つ光景は恐怖的ですらあるのにどこか滑稽。リスペークト!と叫んでいるのがまた面白い。これは、やたらと英語を挟んだり、アメリカ製だから丈夫とか、インディアンだのを軽薄に消費している一家の、特に奥さんの単純さ、安っぽさ、成金感が導入されているからでしょう。

 とにかく、貧困家庭が金持ち家庭にパラサイト、寄生していく話から、その地下で別の寄生虫がいた!という衝撃までがブラックコメディ。結末での惨劇以外はほとんど笑える素晴らしいブラックコメディだと思います。

 監督も、貧困家庭側の家族は政治闘争もしていない、社会問題に関心も無い、更には単純な善悪の区別もない。それが故に、よりリアルに感じて笑えるし、そして社会風刺的な問題提起にもなっている。

2.高低差の演出と格差問題

 この映画でとにかく重要なのは高低差。そして階段。「未来のミライ」の家とは違い、上り下りすることに非常に意味のある住宅及び立地になっています。

 半地下に住むソンガンホと高台の住宅地のパク社長一家。キム社長たちは社会的・経済的に転落することはないので、ソン・ガンホが運転手として入り込んでからも、車が直接車庫から出て、坂を降る描写はない。なんだったら、惨劇の舞台となるパーティの時に客がタクシーやら車やらで上ってくる所を映している。

 一方で、息子、妹の採用面接では坂を登り、パク社長宅に向かう。父と母は坂を上る描写なく採用されるが、父は家の中の大きな地下室で終わりを迎え、つまりは下って終わっている。また、大雨の中の脱出後はわざわざ下りを長々と描く。いかに彼らの住居との高低差があるのか、流れる水を上手く使って見せている。

 そして大事なキーパーソン。元家政婦もまずはハメられて解雇され降って、そして大雨の晩に登る。そして彼女は屋内で地下室に降りる。その後登ろうとしたところで蹴り飛ばされて落ちて死を迎える。

 こうして高低差で乗っ取りの過程や社会格差を明確に描き出したところで、大雨の洪水が半地下一家にとっては体育館に避難する災害、富裕層にとっては誕生日キャンプがふいになった不運、でもパーティ開けてラッキーぐらいの出来事の受け取り方の対比を見せる。

 その結果、多少不潔な状態でパーティに出席した半地下一家は若干の匂いを漂わせることになる。そこに更なる強臭を放つ地下室の男が出現し暴れまわった時、パク社長は思わず鼻を抑えてしまう。それはソン・ガンホにとっては格差の象徴を表す行為になってしまっている。だから凶行の連鎖が起こる。この辺り、実に良く出来ている、と感心しっぱなしでした。

 勿論、まあ流石にバレるだろ系のツッコミ、特に奥さんが潜入する際の架空の家政婦派遣業者はネットで調べたら一発でバレる気がしないでもないですが、そういうのを感じさせない説得力があり、そういう意味ではこの映画を見ている脳内も寄生されていたのかもしれません。

 というところで、「パラサイト」というタイトルの二重性が浮かび上がります。本筋としては貧困家庭が金持ち家庭に寄生する話であり、そこに別の寄生虫がいたことがサプライズとしてあります。ただ、洪水の際に体育館で雑魚寝をしている様子とそんな中自宅の庭でキャンプを続行する息子ダソン。こういう対比を考えると、実は韓国社会においては弱者に強者が寄生しているのでは…?なんていう気もしてきます。そもそも格差の拡大が問題になっている、ということはそういうことですしね。

3.ポン・ジュノ監督降臨メモf:id:tea_rwB:20191108010305j:image

 最後に、まさかのポン・ジュノ監督降臨のメモを。

 監督も大学時代に家庭教師をしていて、そこは2Fにサウナ付きの家だった。親の寝室やサウナ等を生徒にこっそり見せてもらった時、他人のプライベートに侵入していくような感覚があり、それがこの映画の源流だ、とのこと。
 そして凄いと思ったのが、撮影に関して。舞台となるパク社長の家はともかく、半地下の方は街並み丸ごとセットだそうで。考えてみれば、監督の言うように実際の街を洪水で浸水させるわけにはいかないので当たり前ですが、でっかい水槽、プールみたいなとこにセットを組んで街並みを作ったそうです。すげーな。

 試写会に沢山当選させていただいている今年は、白石和彌監督(2回)、瀬々敬久監督、森淳一監督、石川慶監督、マイケル・ドハティ監督、バート・レイトン監督、チャン・ジーウン監督と多くの監督さんのお話を直接伺うことが出来ました。でも、ポン・ジュノ監督まで同じ空気を吸った、同じ空間にいた、となると最早、再来年あたりまでの運を使い果たした気がしてきます。これ以上の感動って今石監督とかなのかな…。