抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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地方映画の世界に足を踏み入れたぞ!「くらやみ祭りの小川さん」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 さあ今回はついに足を踏み入れたご当地町おこし映画。馴染み深い街が映画の舞台となれば、まあ見に行きたいのが人情というもの。東京都府中市を舞台にした映画「くらやみ祭りの小川さん」の感想です。「ちはやふる」が撮影されただけではしゃいでたから、映画作りたくなったんですかね。

映画見る前の時点で勝手に聖地巡礼もした写真貼っておきましたー。

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WATCHA3.0点

Filmarks3.1点

(以下ネタバレ有り)

 1.これぞご当地映画!

 本作は、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」にて定期的に柳下毅一郎さんが紹介している映倫のHPで見つけた地方映画、の枠で紹介されていました。 無論、拠点にしているTOHOシネマズ府中ではその紹介以前から予告されていたのでチェックはしていましたが、そうなると見る一択。

www.tbsradio.jp

 府中は住んでこそ、いないものの、バイトしてた場所でして。ご存じの方もいるかもしれませんが、現在こそ再開発されて駅前にでっかい建物がありますけど、その前の雑然としていた頃から知っています。そのため、映画に出てくる各々のスポットや道路が大体どこなのか分かる!単純に撮影場所、というよりも地続きの府中が舞台になっている映画になるので不思議なワープが起きたりしているのが気になりますが、まあやっぱり知っているところだと楽しいですよ。

 勿論、特に府中と関連の無い、っていうかわれらが調布市の誇る偉人、近藤勇の格言がキーになったりとか、あれ、府中の森芸術劇場とかそういうの紹介しなくていいの?とか、ほぼほぼ地元だから思うこともあるわけですけどね。

 ちなみに、府中を知らない方の為に説明をしておくと、府中市にはかつて、武蔵国府があり、1900年の歴史を誇る大國魂神社という関東でもかなりの由緒正しい神社があり、劇中でも言及されますが、やれ源頼朝だ、やれ新田義貞だ、と色んな偉人が関わっています。んで、そこのお祭りとしてGW頃に行われるのがくらやみ祭りで、そこそこ凄い交通規制と人の山が出来るお祭りではあります。ラジオの放送では宇多丸さんも日比アナもご存じなかったようで、やはり多摩は東京ではないのか…なんて悔しい思いをしました。まあ正直私も、人が多くて邪魔だな、ぐらいにしか思ってなかったんですが。

2.てんこ盛りすぎて...

 さて、ほぼほぼ地元民の所感はおいておくとして、問題は映画としてどうか、ですよ。自治体中心と思われる地方映画にしては、主人公が六角精児さんで奥さんが高島礼子さん、娘さんが佐津川愛美さん、という大変豪華なキャスティング。柄本明さんや中村育二さんまでちゃんと登場するサプライズ付き。

 んで、その六角さんが会社の早期退職制度で退職後、くらやみ祭りの役員を引き受けるという流れで祭りに参画していく訳ですが、ここで中年クライシス、的な問題を一つ提起しているわけです。更に、家の建て替え、その母の認知症、離婚してシングルマザーの娘が孫を放っておいて男と遊んじゃう、息子は役者目指してフラフラしている、となんかもう現代社会の抱える問題をこれでもか、とぶち込んでいきます。さらには、「常識」という言葉で置き換えられていましたが、まあ祭りとくれば当然のごとく出てくる「伝統」と新参者との対立。これは凄い。

 こうした数々の要素がくらやみ祭りの実行によって収斂していくなら、お見事!という脚本になると思うのですが、残念ながら結果としてはバラバラでした。それどころか、それぞれの要素が少しずつ進んでいくので話が進まない。特に認知症の話はかなり唐突で必要な要素にも思えないし、娘を放っておいて、子持ちを隠してフラれ、ストーカーと化した娘はその後も反省せずにくらやみ祭り当日に目を離して迷子になる始末。お父さんの晴れ舞台なのにそれでええんか、君ら。f:id:tea_rwB:20191106182906j:image

3.テーマと結論の不一致。ご当地映画の不都合

 ご当地映画、特に行事を描いた際にどうしても出てしまう不都合っぽさがこの映画では大きく見えていました。

 すなわち、人生は失敗もするもの。でもボロボロでも何歳からでもまだまだ現役、頑張っていこう!というメッセージと、府中の素晴らしさのアピールの両立です。

 ところが、あまりに府中やくらやみ祭りの尊さをアピールするあまり、コミュニティの地獄を表現してしまっていたのが正直なところ。六角さんも、府中に越して3代目だからくらやみ祭りの役員参加を許された、という設定だし、伝統だの誇りだの、とっても保守的な実行委員の面々。そこの中でやってる小さな革新を凄いことのように扱っていてもなぁ、と。

 ラストには、今日から府中に越してきました!なんかお祭りがあるんですか?っていう若者に対して、馬鹿野郎!府中の男ならくらやみ祭りを知っておけだの、勉強しろ、だの言い放つ訳ですよ。でもいくら彼が勉強したところで、彼はくらやみ祭りに参画することは孫の代にならないと許されない。府中市を盛り上げたい映画のはずなのに、ちゃんと府中のことを勉強しろ!という説教と、地方コミュニティの厳しさを浮かび上がらせてしまった訳です。

 「楽園」で日本の限界集落の地獄要素が描かれていましたが、それに近しいものを表現しているのに、それを賛美しているように感じるつくりでした。

 これを見たからって府中市に転入してくる人は、いないでしょうな…。とはいえ、くらやみ祭りと大國魂神社は良いところです。府中競馬場にお越しの際は是非。f:id:tea_rwB:20191106182913j:image