抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

2019年10月に見た過去作の記録

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 毎月恒例の過去作鑑賞記録。10月は本数を減らすといったな。あれは嘘だ。

 配信終了が重なったり、普段は配信メインなので年に何度かしかないDVD一気見大会を開催したりと、気づけば先月を越える約50本に。しかも、「ロードオブザリング」「マトリックス」3部作を一気見したり、年間ベスト級が連発してしまうし、でもう大変な月でした。

テッド

テッド(字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 コメディが合わん!っていうかネタが分からないのが多すぎて面白いとか面白くないとか判別できるラインにない!というのが正直なところ。

 ただ、アダルトチルドレン共依存の問題なのに、それを別の危機が襲って乗り越えたからなんだかんだでなあなあになってて、1番も問題は解決してないのにそれでいいの?という気持ちは否めない。テッドはロリーに対して、俺が誘ったのが悪いんだ、なんていうシーンがあるけど、まさにそれが問題で、それでも行くと決断したのはジョンな訳で。純粋な共依存の解決がまったくなされずにハッピーエンドには頷けない。

ジュマンジ

ジュマンジ (字幕版)

WATCHA3.9点

Filmarks4.0点

 「ウェルカム・トゥ・ジャングル」をスルーしてたら案外評判が良かったので年末の「ネクストレベル」に向けたジュマンジ予習マラソン

 近作はゲームの世界に飛び込んじゃう、日本のアニメで言うなろうパターンだが、この「ジュマンジ」はボードゲームで吸い込まれる人もいたが、基本は現代に飛び出てくるパターン。ARの先取りといっていいだろう(?)

 当時の最新のCGとかを使っている感じがして製作年を見たら1995年。93年の「ジュラシックパーク」を動物でやりたいんだろうな、と感じる。一方で植物系はちょっと古い遊園地の仕掛けぐらいのアトラクション感。タイムパラドックスとか、色々面白要素がぶち込まれていて、これぞエンタメって感じ。

ザスーラ

ザスーラ (字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

 ジュマンジの続編は一応こっち。

 今度はボードゲームが宇宙に飛び出す。色んなアトラクションが宇宙ならではのワンダーに満ちているし、メンター的存在の仕掛けもまあ文句無くはないけどオッケー。

 この手のはクリアしたら帳消しになるから壊し放題で容赦無くて良い。

 お姉ちゃんが余計だったかなー…

ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル

ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル (字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

 「ブレックファスト・クラブ」×異世界転生。見た目はセンターオブジアース2。

 ゲームの中に取り込まれる、というアイデアになったのは非常に現代的にアップデートされており、そこにスクールカーストや美醜、性差といったアバター要素も含むことで多様なギャグと社会的メッセージを可能にしたのは素晴らしい。

 あまりにも行き当たりばったりな作戦、結局ドウェイン・ジョンソンだもんな感は仕方がないので放っておくが、カレン・ギランが曲に合わせてダンス武術をを披露するとガーディアンズ感が数十倍高まる。っていうか、マブリーも入ったんだし、ステイサムとロック様もMCUかDC出ればいいのに。あれか、ワイルドスピード出てるとそっち出れないのか?

 んで、見てると楽しいんだけど「ブレックファスト・クラブ」でも怒った問題が結局何も解決されていなくて。フリッジは何か自分の振る舞いについて反省して謝罪をしたのか。結局自分が優位に立った時にしか強く出れない、自己保身が第一な典型的に嫌いなタイプの人間でありそこからの成長がなかったのがあまりにも残念。ジュブナイル要素が入るなら「ブレックファスト・クラブ」からアップデートしないと。オタクカルチャーも大事だよ!程度のアップデートで、結局のマッチョ主義と不良が子猫を拾うと全部許す理論が横行しているうちは赦さへんで。

ベニスに死す

ベニスに死す (字幕版)

WATCHA3.0点

Filmarks3.2点

 いやー説明がない!!っていうかほとんど台詞がない!

 ここまで台詞が無い中で美少年への不思議な愛情、そして伝染病の話をしてるのは凄いんだけど、推進軸が全く無いからどうも退屈するのよね。今やるならティモシー・シャラメで確定だろうな。

 少なくとも午前10時に見るには眠気を誘ってしまった。

 午前10時の映画祭は、色褪せない名作と色褪せちゃった名作と難解な名作が混ざってるので行く回によるなー

タクシードライバー

タクシードライバー (字幕版)

WATCHA4.5点

Filmarks4.4点

 「ジョーカー」用に。

 ただのタクシードライバーがどこかズレていき、及んだ凶行がヒロイックなものになる。どんな行為も評価と意図は伴わない。喩えそれが行き場のない暴力だったとしても。

 ある種の悲劇が周囲には喜劇になる、という点はひっくり返せばおそらくジョーカーと同じだろう。それにしたってデニーロ。いやー素晴らしい演技。

 それと同時に背景にある汚れたニューヨーク、ベトナム帰還兵の問題から読み解くと見事にアメリカンニューシネマの傑作の文脈にもなる。まだまだ彼がミラーで見たニューヨークは汚れていて、決してハッピーエンドではないのだ。

アジョシ

アジョシ(字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

 舐めてた相手が系の中でも、なんでお前が怒り狂ってるんだ、と相手は困惑するだろう作品。

 復讐というよりも、自分の人間らしさの為に躊躇なく暴力をふるうウォンビンのカッコよさが前面に押し出されている。

 ただ、警察周りと敵がちょっとごちゃごちゃしており、最終目標女の子を助ける、なのに今なんの時間だっけ?が少しある。

メン・イン・ブラック2

メン・イン・ブラック2 (字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

 相変わらず楽しくて愉快。

 短い90分程度なのに1幕目で現状紹介と解決課題を明示、2幕目でメカメカしい色々を出して遊びながら3幕目でちゃんと戦いと謎解きが入る構成がしっかりしてるからエンタメとして荒唐無稽な宇宙人たちを楽しめる。

 改めて2時間尺にした最新作の愚かさを感じる。

 あっさりと前作のオチLの顛末が語られるのは少し悲しいし、Jがまた三下ルーキーキャラに戻るのは不満だが、Kの威厳が凄すぎるからしょうがない。

ドラッグ・ウォー 毒戦

ドラッグ・ウォー / 毒戦 [DVD]

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

 韓国版リメイク「毒戦BELIEVER」の予習で。

 死刑が免れないから司法取引で警察に協力することになるミン。警部がカメラや情報をもとに互いに違う人物になって取引を行う所はとってもサスペンスに満ちていた。

 ただ、その先になるとそれは結局何だったの、という香港の7人とかいう黒幕、そして銃撃戦と死体の山。途中から映画が変わってしまった印象に。

MIND GAME マインド・ゲーム

マインド・ゲーム [Blu-ray]

WATCHA5.0点

Filmarks4.9点

 湯浅政明監督初長編。これを見ないとアニメ映画のファンは名乗れまい、と思っていたのでようやく見れてびっくりした。なんなんだこれは。

 とにかく凄まじい量の描写と情報量がまさに濁流のように押し寄せてくる。 いきなり死んで、生き返って、カーチェイスでそれだけで十分に面白いのにクジラに飲まれて暮らして脱出する。そこに現れる無限の可能性とクリエーションとイマジネーションへの歓喜。生への大讃歌。さらっとされる種明かしも含めたストーリーやキャラの設定自体魅力的かもしれない、でもそのすべてをかっさらっていく映像的迫力、スピード、見させる力。図抜けた映像表現力にとにかく降参するしかない。「きみと、波にのれたら」が随分一般向けだな、なんて思っていたけど「夜は短し歩けよ乙女」も「四畳半神話大系」も「夜明け告げるルーのうた」も全部大衆向けだ。それを今ここで初めて味わった。この上で、月曜から始まるクレヨンしんちゃんのシロが主人公のアニメがどうなるのか、非常に楽しみ。

孤狼の血

孤狼の血

WATCHA5.0点

Filmarks5.0点

 なーんでコレを劇場で見なかったのか。やくざモノとそんなに親和性が無かったから遠ざけていたが、麻薬カルテルものとか見てるなら殆ど変わらない。っていうか、県警の側も腐っているのでこれまたハリウッド式のやつとか、日本型社会の縮図とか、色々考えることになる。

 まあお題目よりなにより、この映画は顔だ。役所広司の、松坂桃李の、滝藤賢一の、江口洋介の、石橋蓮司の、色んな人のキメになる顔の瞬間が死んだ後だったり、生きる瞬間だったりが輝く最高の映画に。色々見て気づいたゲロとグロが必須の白石和彌作品のすべてがギシっと詰まっている。何が悪で何が正義か。ガミさんを継いだ日岡の今後が描かれるだろう映画続編や、このミスにランクインしていたはずの原作者柚月裕子先生の別小説のチェックもせねば、と思いを改める一作に。

日本で一番悪い奴ら

日本で一番悪い奴ら

WATCHA5.0点

Filmarks4.8点

 いやー面白い。綾野剛の純朴な青年から一気に豹変してヤクザとの境目のわからなくなり、そして落ちぶれていく諸星の演技は素晴らしかった。

 何よりもこれが実話ベースなことが衝撃。善悪の境目は非常に曖昧な中で、必要悪と官僚主義的組織の弊害と。最初は大したことなかったのかもしれないが、寝ぼけ眼で撃ったとしても銃弾が発射されてしまえば、ガラスにひびが入ってしまう。そして柔道が体から文字通り離れる時、彼は純朴な青年ですらなくなっている。最後には、柔道で投げられるだけの存在に。

 「日本で一番悪い奴ら」なのだから、諸星1人の話じゃない。チームとして活動したから太郎や中村獅童たちも含めるだろう。でも、本当は。あの会議にいて逮捕する側に回っている次長は?税関は?翻って、そんな組織ない?末端に責任取らせて黒幕がふんぞり返ってるヤクザ的構造の組織。そこまで思うとき、どこまで堕ちても自分の警官としての矜持を捨てていない諸星が愛おしくすら思えてくる。

日日是好日

日日是好日

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

 「アイネクライネナハトムジーク」で多部未華子映画を見ていない、という事実に気づいたので鑑賞。

 樹木希林の演じる先生の所作と茶道の持つ落ち着きが映画全体を支配し、とってもゆったりした、それでいて要所要所ににらみの効いた作り。茶道の所作と同じように細部が神に宿る中で、黒木華の演技は見事ではあるものの、モノローグで説明をしすぎなところが否めない。

 映画外文脈で言えば、樹木希林さんの終末期における黒木華多部未華子コンビへのバトンタッチになる作品でもあるので、「継承」の文脈をもう少し強調してほしかったかな。

悪の法則

悪の法則 オリジナル版 (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

 なーんだこの映画。どんどんドツボに嵌っていく胸糞的ジャンルではあるのだが、いかんせん話の推進力が無い。話としては、一度でも手を突っ込んだら戻れないぜ、手を突っ込んだつもりがなくてもな、という話なのにこの映画に手を突っ込んだ気がしない。あれ、そう考えるとよく出来ているのか?

 関係性の説明が全くないまま、次から次に起こる事、会話がさっぱりどうなるかがわからないし、終わってからもそこまでピンと来ない。そことそこが繋がってたのいつ?あの告解は何だったのだろう…等々。そして結局、主人公たちは何をしようとしていたのか。勘違いから地獄に落ちていく後半は焦りだす男たちの様子で楽しめるんだけど。

ミザリー

ミザリー (字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

 1番怖いのは狂信。だからTwitterで出版社が褒めちぎろうキャンペーンし出したらヤバいって、うん。

 アニーら作品のメッセージを受け取ってるのではなく、都合の良い部分だけ自分に合致させている。「ロケットマン」という連続活劇の話が象徴的だが、映像作品はあの時実はこうだった!という視点の変化が1番と言って良いぐらい面白い。それが分からないアニー。だからあっこまでのことができてしまう。

にしてもハンマーのシーンは痛そう…

レザボア・ドッグス

レザボア・ドッグス(字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

 面白い、面白いんだがこの作品の評価は革新性が確実に含まれるので後追い人間には少し新鮮味がない。

 強盗ものなのに盗むシーンは見せない、計画失敗後の裏切り者探しの会話劇がメインだが、正直裏切り者の正体も意外性があるわけでも劇的な告白があるわけでもない。直ぐにわかったし。

 いわゆるタランティーノ節が炸裂する中で、意外に本当に無駄な話はそこまで沢山じゃないのも物足りなさすら感じる。ワンハリ見てるんだぜ。100分尺の無駄話ぐらいじゃ飽きないよ。

 秀逸とされるオープニングはさすがに初見だとキャラ把握しきれないので、そこは2回目以降の鑑賞に持ち越し。

パッセンジャーズ

パッセンジャーズ(字幕版)

WATCHA3.0点

Filmarks2.9点

 うーん、なんか乗れず。

 アン・ハサウェイアン・ハサウェイっろい情緒不安定気味なカウンセラーとして航空事故の生存者から聞き取りを進めていき、事故の真相を究明!という割にラブロマンスに話が向かい始めて、真相どうなった?感が深まっていく。

 そのタイミングでの真相はあまりにも唐突で、前触れも無い。それじゃあ今まで見せられてたの、全部無意味じゃん…という虚無が残った。

ダーティハリー

ダーティハリー(字幕版)

WATCHA4.5点

Filmarks4.3点

 ガンガン撃ちまくるほぼほぼ西部劇な刑事もの。警察権力の暴走でもあるが、絶対的悪に対しての絶対的正義としてのキャラハンなので仕方がない。あまりにも有名なラストシーンで警察官としての自分は捨てて正義を見に纏ってるのだ。

 うん、違法捜査で証拠に使えないから釈放は分かるけど、そいつ犯人なのは確定なんだから監視ぐらいつけろよ…尻拭いさせられて可哀想や。

テイク・シェルター

テイク・シェルター (字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

 いわゆる統合失調症なのか、黙示録的な嵐を悪夢で見るようになった主人公は嵐のシェルター作りに没頭し、職も信頼も失ってしまう。母親の既往歴や、それに伴う家族愛と正義感の暴走にも見えるシェルター作りは、娘の手術前の現実逃避とも思え、信頼できない語り手を地で行くので、見えている映像が実際か妄想かの判別がつかない。

 そんな中で訪れた嵐。シェルターに避難し、一夜を過ごしたのち、その扉を自分の力で開けるのか、即ち現実を受け入れるのか、幻視に囚われるのかの選択を迫る。ことここに至って、彼は信頼できない語り手から、観客に感情移入される対象となる。

 そこまでして、やっとの思いで受け入れた現実の先にあるのは施設への入院。それを迫られたうえでのシェルターの無い最後の家族の幸せの時間に訪れるラスト。彼は預言者だったのか、それともまたも現実から逃避したのか。ラスト20分のジェットコースターで一気に評価が上がった印象。

 何よりも支える妻を演じるジェシカ・チャステイン。元々大好きだが、今回は美しいだけでなく、いい具合に疲れているのがたまらなく作品にマッチしている。

ハルク

ハルク (吹替版)

WATCHA2.5点

Filmarks2.4点

 アン・リー版のMCUじゃない方のハルク。いやー2時間が長かった...。

 MCU版をそこまで克明に覚えているわけではないが、どう考えても緑色の巨人になって暴れるのが見たいのにそこまでがあまりにも長い。細胞がどうとか、遺伝がどうとかそういうのいいんだよね、別に。

 んで、オリジンもくっそ長いのに恋人との親子2組の話が中心なのに、父親と米軍とどっちが敵なのかさっぱりわからない状態での進み方にはイライラしかしない。結論、総じて父親はクソ、でいいんか。アメコミへのオマージュなのかもしれないコマ割りを意識したようなショットも効果的に感じることは無かった。あまりにも銃撃され続けるバナーは可哀想で、扱いが完全に人間じゃなくてキングコングとかゴジラ級だったのも、大統領がカジュアルに許可してるのもなんだかなあ。

オブリビオン

オブリビオン (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

 一個前に見たのが「ハルク」だったからか、驚くほどストレス皆無。普通にストーリーが進んで安心した。何より素敵なのはSFとして最も大事な荒廃した地球やメカメカしさ。その点では、十分な説得力を持っていたのではないだろうか。

 序盤から怪しさ満点の交信相手含め、なんとなくこうではないか、というネタ自体は当たっていたが、この終わり方はハッピーエンドなのだろうか。そこが非常に気になった。今回においては、元々オリジナルの女性とコピーなのにきらりと光るトムの恋愛という話でもあるし。結局自我とは何か、とか、他者との関係性において同等の記憶・容姿を保持した相手であれば別個体でも同一人物として扱えるのか、何が本人を本人たらしめているのか、という根源的な問いを突き付けているわけである。

 まあ後はあれだよね、あっこまで凄いドローン作ってるのに核爆弾は検知できねぇのかよ、っていうね。

パブリック・エネミーズ

パブリック・エネミーズ(字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

 伝説の大強盗ジョン・デリンジャーの生涯を描いた伝記映画というか、ギャング映画というか。ジョニー・デップだからすべてがカッコイイ。警察署にふらっと入っていって野球のスコアを聞くところとか、もうかっこよすぎる。

 FBIのフーヴァー長官も登場し、州をまたいだ犯罪への対処という意味でも重要な事件だったようにも感じるが、これまで見てきたフーヴァーよりかなり手抜きだし、焦燥感からか、どんどん警察のはずなのにギャングのように拷問をしていき善悪の区別もつかなくなっている。デリンジャーが銀行強盗で客から金を盗まずに笑われるのとは真逆だ。

 大強盗の生涯を描けば当然のラストであり、アメリカンニューシネマの延長のようにも感じるが、こういうギャングものをヒロイックに描くのも難しいのかねぇ。ボニー&クライドの「俺たちに明日は無い」も早く見たいなぁ。

アメリカン・ギャングスター

アメリカン・ギャングスター (吹替版)

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

 ギャング2夜連続。30年代のアメリカのパブリック・エネミーはギャングだが、60年代は麻薬王汚職警官。デンゼル・ワシントン麻薬王やって、「トレーニング・デイ」で汚職警官になって、「イコライザー」で汚職警官を処分する側に回るのでどんどん聖人君子に近づいてないか。

 のし上がっていく麻薬王フランク・ルーカスの一代記としても楽しめるし、それを追いかけるラッセル・クロウが演じる完全な正義の人、聖人の物語としても楽しめる。両者がようやく交わり始める中盤まで少々退屈だが、そこまではフランクの麻薬ルートの開設や家族系の話で持っていける。

 マジで米軍が密輸ルートに使われてたことと、警察官の汚職っぷりは驚きだが、この映画はただのギャング映画では無い。終盤、両者が相対した時にこそ今回の映画のテーマが堂々と語られれるが、ルーカスは旧時代のマフィアが支配するニューヨーク、ひいてはアメリカを脅かす黒人実業家の象徴であった訳だ。2007年に描かれたこの世界観、恐怖はトランプ政権誕生の底にあるのかもしれない。

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う! (字幕版)

WATCHA4.5点

Filmarks4.5点

 エドガー・ライト×サイモン・ペッグ×ニック・フロスト3作目。

 青年期の栄光から抜け出せないサイモンペッグに大人になれよ!と言い出す話をまたやるのか、と思ったらそれはやるんだけど、ただの酒飲む話じゃ終わらない。ショーンやホット・ファズからアップデートして、未熟なままの自分の肯定と人類の肯定を繋ぎ合わせ、成長とマクドナルド化(劇中だとスターバックス化)現象を重ねることで、うまいこと侵略ものとして作り上げた。損壊すると途端に安っぽくみえる青い液体はレーティング対策なんだろうな…

 「ワールズ・エンド」に辿り着くのが目的だからわかりやすいし、それでいて辿り着いてしまったら文字通り世界が終わってしまうのでは?なんてことも考えながら、お決まりのくだらないギャグも炸裂しているのでノンストレス。バカやるのが人間の基本的な人権だ!と叫ぶのにこれほど適したクリエイター陣はいないだろう。

 アバウト・タイム~愛おしい時間について~

アバウト・タイム ?愛おしい時間について? (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

 タイムトラベル×恋愛もの、って感じで恋愛映画ベスト10みたいなのに必ず入ってるような作品だけど、うーん、思ったほど。父子の物語としての方が面白かったし、タイムトラベルを経て人生の1回性を見直す、というのはベタだがやはり心に来る。レイチェル・マクアダムスめっちゃ可愛いし。

 一方で、タイムトラベルを人生の伴侶を見つけるために使うのは結構。でもそれ見せられても、って感じが否めない。ノーリスクで繰り返しやってるだけなら勝手にやってろ、としかいいようがない。っていうか、それ出来るなら全戦全勝の裁判官になれる訳で、終盤にある裁判で無罪とって良かった、みたいなことはないはず。

 最も重要なのはタイムトラベルのSF的な穴が余りにも多すぎる。ルールを説明しないようにすることでそこまで穴が見えにくい構造にしているようには感じたが、それにしたって酷い。バタフライエフェクトの発生が精子のタイミングにだけ適応される、なんてのは流石にひどすぎるでしょう。は?ですよ。そして、感動のシーン。昔に戻って浜辺の散歩。うん、子どもが生まれる前に戻ったらダメのルールすら守らないのね。SFとしてあまりにもあまりにも。ガッカリ。

サイコ(1960)

サイコ (字幕版)

WATCHA4.5点

Filmarks4.4点

 ヒッチコックの大名作にして、もはや殺害シーンを知らない人はいないのではないだろうか。逆にそこが有名すぎて、その前段階の前半を引っ張るサスペンスや後半の謎解きパートはさっぱり知らなかった。てっきり連続美女殺人事件の話かと。いや、そうなんだけど。

 そういった訳で単なるサイコキラーの話だから「サイコ」だと思っていたが、解離性同一障害というか、虐待に近い状態からの母親の内面化による二重人格だから「サイコ」というのは素晴らしい。タイトルとして凄い秀逸。もっとも、サイコキラーみたいな概念はヒッチコックが作った時にはなかったかもしれないが。

 前半を引っ張る大金を盗んだ女の追われる恐怖、そしてそこからのベイツ側の真実に近づかれる恐怖と観客のみが私立探偵に感じる危険さ。まさにサスペンス。全く落ち着く暇のないストーリーテリングは流石の一言。

 映画としても見せ方がフェアだし、まあ正直すっかりアイコン化されてしまっているノーマン・ベイツが殺人鬼だと知っていなくても、二重人格で既にいない母親の存在に関しては分かりやすく描いているとは思うけど(鳥のはく製のメタファーとかね)、それを1960年に映像化している、という事実が素晴らしい。ってか実話ベースなのかよ…。

ロード・オブ・ザ・リング

ロード・オブ・ザ・リング (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 壮大すぎてまだ点数の判断ができない!

 ファンタジーの世界観の提示としては、ドワーフ、オーク、エルフ、ホビットと素晴らしい出来だと思うんだが如何せん長い。ナレーションで指輪の呪いを説明してから、その指輪を葬るという大目的の提示まで90分かかってる。短い映画なら終わってるぞ。まあ、そこまでも小さなステップを設けているのでこれ何してるんだっけ?は少ないので長い割には見やすいのも事実。

 ただ、ルール設定が難解というか、都合がいいとこもある。サルマンの妨害で坑道に行く羽目になるが、あんな遠距離攻撃できるならどう考えても直接攻撃でよくね?とか、指輪に憑りつかれる人、憑りつかれない人の境目とか。まあこの辺含めて3部作で結論出るんだと信じたい。

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 (字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

 よくよく考えてみれば、主人公のフロドと指輪は捕まって解放されただけで話は動いていないし、捕まっていたホビットの2人も殆ど森の中にいただけ。

 つまり、残りのドワーフ・人間・エルフの珍道中と砦を舞台にした決戦に話の焦点が絞れているので単なる戦記物としてかなり楽しめた。3時間あるんだから絞ってそれかよ、って気もするし、やっぱり、うん、よく考えたらブリッジとはいえ話進んでないんだけどね。

 ガンダルフ復活で登場人物の命が軽くなったのは否めないが、それぞれのキャラクタの関係性も見えやすくなった。砦に籠ってから登場する地図をもっと早い段階、できるなら1本目の時点で教えてくれていればもっと色々イメージしやすいのに、なんてのもまあ壮大すぎてアレか。

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

 バラバラになっていたメンバーがついに集結しての最終決戦!!!と行きたいが、また離脱と集合を繰り返し、二つの塔で見たような攻城戦の展開は見飽きてしまっている。ただ、投石器とかは結構好きだったよ。そのうえで見事最終決戦で勝利!!気分が最高のところから残り時間を見てびっくり。そういえば忘れていたフロドの本筋。そこから1時間の惰性と決着後の宴会が30分弱。いやーいくら何でも長すぎる。

 結局あまりにも長くなりすぎて指輪を火口にぶん投げることは覚えているんだけど、それ以外を割と忘れちゃってるというか。フッといてスルーされてる気がするゴラム周りとか、結局敵の魔法使いのやーつどないなった、とか、指輪に魅入られるかどうかのルールとか全部放り投げた気がする。まあ完結させられたこと自体が凄いか。

時計じかけのオレンジ

時計じかけのオレンジ (字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

 こんな強烈な映画体験はあるだろうか。

 二度とこの映画を見る前に戻れないし、第九も雨に唄えばも陽気には口ずさめない。いや、口ずさんでしまった後に後悔するようになってしまう。まるでこの映画自体が壮大なルドヴィコ療法だったように。

 独特のスラングのような用語を交えながら襲ってくる性と暴力の前半に、徹底的な管理社会風刺とも取れる後半、そして人間の解放といえるラスト。キューブリックは我々の心に潜入してとんでもない爆弾を置いていった。

 前半のイメージがあまりにも強かったので後半はどこに着地するのかさっぱり分からず居心地悪くなって少し間延びを感じた。ただ、そのこと自体が性と暴力を自ら欲している、エンタメとして消費している何よりの証左にも思えて、またやるせなくなる。

哭声/コクソン

哭声/コクソン (字幕版)

WATCHA4.5点

Filmarks4.3点

 いや、気持ち悪い。モヤモヤしかしない。なんなんだよこの変な映画。

 シンプルに凄いのは國村隼と娘のヒョジンを演じたキム・ファニ、そして謎の女ムミョン役チョン・ウヒ。表層的に言ってしまえば、役者って凄いなーと。ふんどし一丁でシカの生肉啜るって、日本じゃ絶対NG出すよね…。

 とりあえずで演技の話を持ち出さないと咀嚼できないレベルでナンジャコレ、なんですよ。キリスト教シャーマニズムなどの異なる宗教戦争感、祈祷ダンスの楽しそうなわっしょい感と容赦ないグロと無情観が襲ってくる。

 額面通り受け取るなら祈祷師と國村さんがグルだったように思える。でも、途中でわざわざ一旦解決したように思える段階で流れる幻覚キノコのニュースと事件現場。言ってしまえば、祈祷師も、主人公も、若い女も、みんな幻覚キノコを食ってるだけなのかもしれない。でも科学だって一つの宗教だ、なんて考えだしたら…。

 若い女の名前はムミョン。北欧神話の記憶をつかさどる烏、ムニンがちらつく。めっちゃ烏吊るされてたし。あー、神話とか聖書の勉強しないと理解できないんだろうなぁ…

アシュラ

アシュラ(字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks4.2点

 いやー、暴力に容赦がないのが韓国映画ではありますが、この映画は殊更に暴力に余念がない。とにかく悪くて最高なファン・ジョンミンと彼を逮捕したい検事の闘争なのに検事側も真っ黒な手を使うし、暴力が過ぎるしで、そりゃ主人公のドギョンも暴発しますわ、という感じ。

 とにかくファン・ジョンミンの思いっきり悪いフルチン恫喝に対抗するにはそりゃドギョンはグラスを喰うレベルの狂気を見せるしかない。まあ悪い奴らが地獄絵図に引きずり込まれるので、別に残念にも思わない。ドギョンに最後に残った絆と思われるソンモだって、ドギョンが引き入れたとはいえ、完全に闇に魅入られて変わってしまっていた。それを選んで、ドギョンについていく側から従える側へ脱皮しようとしていた。地獄の権力争いの中で、棒切れとかソンモとかも含めて、飼い犬が手を噛もうとするあがきが、美しく、汚い。

戦場のメリークリスマス

戦場のメリークリスマス

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

 大島渚監督作は初めて。よく考えたら日本の巨匠は黒沢明を何作か見たにすぎないな。

 戦時中の捕虜と日本兵の話。両者の交流を通して、西洋的な文化と日本的な文化、死生観や恥の概念の対立を描きながらも、それは愛や友情によって越えられることを示唆してくれる。とはいえ、現代の倫理観をもってすれば、大日本帝国の話になるや否や、基本の死生観とかのベースがどこかおかしい奴ら扱いできるので、ロレンスを始めとした捕虜側をヒロイックに捉えてしまう。実際、第二次世界大戦中に剣道だの切腹だの、いったいお前らは五稜郭の戦いや西南戦争の時代を生きているのか、って感じだし。これを日本における価値観がアップデートされたと捉えるのか、純日本的なものを奪われて価値観を強制されたと捉えるのかで、左右の対立とかはあるんだろうな、とそれも浮き彫りになった気がする。

 砲弾が飛んできたり、銃を撃つシーンがあったり、戦闘機が飛来したりするシーンが無くて、危機感のようなものは殆どない。それなのにどこか戦争のにおいがちゃんとするのは、やっぱり監督が戦争を知っているからなのだろうか。国家に殉じる人間の愚かさや小ささもしっかりと描き込まれている。

エンド・オブ・ウォッチ

エンド・オブ・ウォッチ (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

 POVでロス市警のコンビを追うロス市警24時みたいな感じ。カメラを片手に通報があれば事件の解決に乗り出す訳だが、その中で少しずつ忍び寄るカルテルの影。元々黒人層とヒスパニック層の対立が激化している状態なので、常に安全な感じは無かったとはいえ、後半の何が起こるか分からない感は良かった。

 ただ、前半の警察24時っぽい部分はあまりにも淡々とひとつひとつの事件が過ぎていくし、設定上非常に顔に近いショットが続きすぎで、どうしても単調に感じたし、ところどころ、これは一体どのカメラで撮った体のPOVになっているのか、曖昧なところもあり、後半は完全にPOVを捨て去り、視点がカルテル側に移ったりもするし、客観視点も入る。そうなると単なる警察VS麻薬組織ものでもあり、この作品のオリジナリティはなんだったんだ、と問われるとうーん、と思ってしまう。

 ああ、あと最近ジェイク・ギレンホールは悪い奴かサイコパスなのが当たり前になっていたので、シンプルにいい警察官でそこはなんか新鮮な驚きだった。

マトリックス

マトリックス (字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

 どうせ10月でネトフリ配信終了なら無理してMX4D見に行っておけば良かった…と後悔するとは。ロード・オブ・ザ・リングに続いて3部作に手を出す月になるとは。

 もはやあまりに有名なアクションシーンが多いが、そうは分かっていてもカメラの回り込みやスローモーションの多用などで現在でも新鮮に楽しめる映像。20年前の作品が現在でも遜色なく感じるのだから、いかに当時凄まじかったのか推して知るべし。

 そしてかなりSFよりだと思い込んでいたが、どちらかというと神話に近い。ネオの辿った軌跡や預言者の存在、敵は社会自体というテーゼ。まあ控えめに言ってネオはキリストであり、布教する=マトリックスからの解放、という物語に今後なっていくのでは。でも、今作ラストであそこまで強くなっちゃったネオに相対する敵をこの先出せるのか?とも思う。

マトリックス リローデッド

マトリックス リローデッド (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 約束の場所、ザイオンを守り抜く話という大きなストーリーが走っているのに、ネオやモーフィウスは預言者の言葉の方のとおりに動くので、小さな話が続き、結局今何のためにしてるっけ?が多い。特にカーチェイスシーンなどは少し冗長。対多人数戦闘など、見どころもあったが連続で見ているとカンフーアクションに若干の飽きが来ているのも確か。あと多人数戦闘においては、流石に技術の進歩のおかげか、現在見るとどうしても実写ではなくアニメーションに見えるレベルで粗い。こればっかりはしょうがないが。

 話の構造自体は、この映画の構造とこの映画の世界の話が全く同じつくりであり、最初に見せたトリニティーのシーンからクライマックスに突入するように、事前に決まっているところに向けて突っ走っているだけで、そこに選択はない、という予定運命的な構造。そこでラストのネオがもたらした結果がこれを翻す、反逆=レボリューションに繋がるのだろう。

 いずれにしても、繋ぎ、という側面を強く感じずにはいられない作品だった。

マトリックス レボリューションズ

マトリックス レボリューションズ (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.3点

 えー、これで完結なの。完結編は殆どマトリックス空間での対人アクションを放棄して、ザイオンでの人類対機械での普通のSFアクションになってた。っていうか、トランスフォーマーエルサレム守る為にあんなにメカメカしててええんだろうか。

 世界の理のほとんどを説明してしまった後なので、回収的なカタルシスはなく、ザイオン、モーフィウス、ネオと視点が3つに分かれて場面の進みが非常に遅い。結局評議会は何の機能を果たしているのかさっぱりだったし、制限のない世界で何でも出来るワクワクから、制約がただの枷となっただけの印象に。うん。リローデッド通してもキーメーカーを監禁してたあのフランス人の意味だけはわからなかった。

イエスマン "YES"は人生のパスワード

イエスマン

WATCHA3.0点

Filmarks3.2点

 うーん、アメリカンコメディやっぱりハマらない説がまたしても。

 どうしたって自己決定権を奪う形の洗脳に近い宗教的なアプローチでの人生への干渉は笑えない。いい方に転がったからマシなだけで、クビ、横領と思われて逮捕、テロリストとして逮捕、「死ね」と言われて死ぬ、イエス教団に貢いで金欠。無限に広がるバッドエンドから偶然的にハッピーエンドを掴みとったに過ぎない。例えば、対比的にNOと言い続けて転落する人物を描くなどしていればまだ入れた。あと、NOと言ったら罰が当たっているかのような描写だが、少なくとも何度か罰を受けないでNOといっている場面があった。厳格化されたルールの運用こそが、この作品の笑いに繋がるのでそこが緩いところがあると文句がどんどん出てしまう。最後にこの考え方自体を大きく茶化したからキライ、がまあ別に、ぐらいになっただけだ。

 そして、人類はもうズーイー・デシャネルは信頼できないのだ。あんな出会いでキスしてくる変なバンドやってるズーイー・デシャネルがいい子なわけがない(完全に偏見に満ちた文章)。それほどまでに(500)日のサマーでの猜疑心は晴れないのだ。

 あとは完全に邪推だが、イエス=キリスト、と考えるとキリスト教の否定はアカンに繋がるようにも見えてなんだかげんなりしながら途中を過ごしていた。多民族多宗教が登場している故になおさら。いや、その意図がないのはわかっているんだが。

スティング

スティング (字幕版)

WATCHA5.0点

Filmarks4.9点

 Jリーグの応援でもお馴染みエンターテイナー(フォルツァヴォルティスアーレ!、オーオーヴェルディ川崎〜!など)の心地良い響きと共に各章ごとに柔らかな絵から始まる絵巻物を見ているよう。


FC東京サポによる「エンターテイナー(ヴェルディ川崎チャント)」

 スルスルと捲る手が止まらず、ロバート・レッドフォードポール・ニューマンが「明日に向って撃て!」以来の再共演なのにアメリカンニューシネマって何だっけ?ってぐらい明るくポップなコンゲームを楽しめる。

 観客に見せている仕掛けと見せていない仕掛けがあるので、どう騙すかのドキドキと騙されていたことが分かってのサプライズで何度も美味しい。

ルーム

ルーム(字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

 監禁された部屋からの脱出劇、だと思っていたけども、勿論それは前半を引っ張る大事なパートだが、5歳の子どもが世界を知る、という話というべき。それまで白黒で育ったが色に関する知識はある子が、カラーの世界をどのように認識するのか、「メアリーの部屋」と呼ばれる思考実験があり、それの実写化だ。それゆえに子役の演技の凄さに注目せずにはいられない。彼にとっては、重要な人生の大きな一部分であり、且つあの年齢にして、既にラストでイニシエーションを経験したことになる。

 一方で、母親の希望と苦難もしっかりと描き、子ども中心の話のなかで彼女も明確な被害者であることに配慮がしっかりと行き届いている。行き届いている為に、映画としては少し視点が散逸した気がしないでもない。

ビートルジュース

ビートルジュース (字幕版)

WATCHA3.0点

Filmarks3.1点

 ティム・バートン×マイケル・キートン。このノリでバットマン作ってた感が匂うぞ。

 冒頭10分程度であっさり死ぬ夫妻。一応悲しそうな音楽を流してるんだが、作ってる内心楽しいのがなんだか漏れ伝わってくる。肝心のビートルジュース自体はそんなに出番があるわけじゃないし、写真と本を取り返せ!と課されたクエストを知恵を絞って解決するのかと思いきや、そんなこと忘れてレッツパーティ!だった。うん、中身がスカスカだと言われても仕方あるまい。ティム・バートンがいわゆるフリークスのような、変なものを愛していることがビンビンに伝わるし、それはバットマンリターンズで証明されている。

 あとは何といっても、ウィノナ・ライダー。ゴシック衣装の厨二とか単純に萌えの消費加速度が凄いだけじゃなくて、中身がついていく美麗さ。そりゃビートルジュースも結婚申し込むって。

SCOOP!

SCOOP!

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 何らかのきっかけで芸能ゴシップカメラマン福山くんと新人記者二階堂ふみのバディものであり、かつ新人教育お仕事もの。まさに水曜どうでしょうコスタリカケツァールを撮る旅でバズーカ、なんてカメラのことを呼んでいた訳ですが、まさに射撃、スナイパーとしてのカメラマン、スクープを狙う話。

 言い方が悪いんだけど、うん、大根監督なのですごく上手に作っているのだが、いかんせんベタしかない。戦場を離れた、何者かになりたかった男のカムバック物語、そして継承の物語としてこうなるだろうな、をそのままやってるだけとも言える。ただ、記者とカメラマンの違いを言っておいて、結局二階堂ふみはカメラマンを継承しちゃってる訳で、そこの混同が起きてるように思える。

 この映画のオリジナリティは?と問われたら、リアリティを無視した部分の絵作りだろう。明らかにリアリティラインから浮いているラグビー作戦や、福山雅治に誰も駆け寄らないところなど。これは写真を題材にしているだけあって、実際がどうかよりも瞬間の絵作りを重視したのでは、と感じる。

 最後に、射殺の瞬間を週刊誌面に載せるのは、人権とかそういう問題じゃなくてアウトだから。議論の余地ないから。あと、警察何してんねん。確保―!じゃないわ。

インセプション

インセプション (字幕版)

WATCHA5.0点

Filmarks5.0点

 難解だと聞いていたが、そんなことは感じずむしろ超親切設計すぎてびっくりした。旅の終わりを明示しておいて、まず始めに大雑把な設定説明があり、その後新人を訓練する名目でこの映画のルール説明が懇切丁寧になされる。このパートは退屈ではあるもの映像の新鮮さで目を繋ぎとめることに成功していると思う。計画が始まれば、銃撃戦やらカーチェイスやら無重力やらやりたい放題で、第何階層の話か確認さえできれば時系列も同時、キックも同時じゃなきゃダメって説明されているのでちゃんとサスペンスもある。親切すぎて映画冒頭のシーンへの繋がり方は途中で想像できるぐらいだし。

 肝心のラストカット、1番いいところで当然疑う「これも夢?」に対する解答を宙ぶらりんにしやがる辺り、コマの回転を凝視していた自分を振り返って、ノーランにやられたっ!と悔しい気持ちになるが、これは映画を見ていて大好きだったの宣言に他あるまい。

 「インターステラー」もそうだったが、この話もSFっぽい皮を被ってこそいるが、普遍的な愛や乗り越えが一番描きたいテーマであり、ノーランは基本的に人間の方に興味があって、だから戦争映画を撮っても「ダンケルク」みたいになるんだな、と納得が行きました。

プレステージ

プレステージ (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

 2人の手品師が騙し合い、切磋琢磨というよりも潰し合う、そこにはどんでん返しが。そんな話だと知っていたが、テスラの文字が見えた瞬間、え、プリーストの『奇術師』じゃんと。まさかの遥か彼方に読んだ本の実写化だった。ちなみに本棚を漁って見つけた文庫本の巻末解説だとノーラン監督、ガイ・ピアース×ジュード・ロウで映画化進行中、とあった。そんなふわっとした段階だが、2004年米国公開、2006年東宝系で日本公開まで書いてあるので、バットマン作る前からノーランって有名だったんだーなんて。

 さて、本題。確実に本を読んだ時より数十倍難解になっている。とにかく時系列が乱れまくりで、正直言って今見ているのがどっちの場面で、裁判で裁かれている方か、死んだ方かどっちだっけ状態。そこに女性関係も絡んでくるので2回見ないと普通は理解できないだろう。幸い、途中でプリーストの奴だ!と気付いたので幾分かは思い出して混乱は少なめだったが。ただ、それを差し引いてもやはり時系列シャッフルはしすぎだ。

 そして、映像化したことでテスラ装置を使っていた方のネタバラシは伏線含めてしっかり出来ていたと思うが、もう片方は流石に唐突。取り扱い要注意なのに最後にそれバラされても分かるか!と。

 あとは原作の印象だと、光と闇、2人の奇術師、そして科学と奇術。対比関係が非常に象徴的な作品なのだが、科学と奇術の境目の話が殆ど感じられなかった。あれじゃただの奇術装置じゃないか。

 ちなみに、原作は2人の手記を読む形だったはずで、時系列シャッフルも無いし、巻末解説の言葉を借りれば「奇術」と「記述」というダブルミーニングも日本語だと生まれる傑作だったと思いますが、読んだの、なにぶん10年以上前なもんで…。

きみに読む物語

きみに読む物語(字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 うん、普通に純愛ものでいい話だった。爺さんが認知症の婆さんに誰かの若き日の恋物語を聞かせている。彼らが誰なのか、と恋物語の行く末が焦点なのだが、これだけ引っ張るんだし、婆さんは認知症で誰が誰かもわからない現状を踏まえれば、恋物語の結末と現在の間に発生する齟齬・うねりを期待していたら、シンプルなやーつだった。うん、その脳にセットしておけばもうちょっと感動したと思う。

 とはいえさ、いくら時代があれだからって気に入らないやつからの手紙は1年間も勝手に止めておいて、そいつを忘れてお眼鏡にかないそうなやつにはええ顔。昔の男に戻りそうになってから手紙を渡して、云々、って母親のくだり端的に言ってクズじゃん。自己決定権が欠片もないし、去り際の台詞が「正しい選択をしなさい」だった。「後悔の無い選択をしなさい」ならわかるけど、アリーが個人として全く尊重されておらず可哀想だった。

ヒミズ

ヒミズ

WATCHA3.5点

Filmarks3.7点

 自分の生を承認されない中学生2人と震災を重ねて描写することで、罪の肯定、圧倒的生への讃美歌となっている作品。

 まあそりゃ称賛されるわ、という染谷将太二階堂ふみの芝居、そしてそれを強調する園監督だとすぐにわかる台詞回し。何者にもなれずに終わっていく物語だが、何者かになれる希望が残されている。勿論、よく考えると事態は殆ど好転しておらず、この後の茶沢の生活がどうなるのか、暗い気持ちにもなってしまう。

 基本の場所がボートハウスか学校で、それ以外は夜の街が多く、正直言ってボートハウス自体が川沿いということもあり、此岸なんでしょうか。そこに執着してた人、終着した人、出ていった人。そんな話にも感じ取れる。

シングルマン

シングルマン (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

 同性愛者が恋人を失ったある1日を描写する。まるで主人公が感じる現実のように特徴的なライティングや画面の絵が叙情的。監督誰かと思ったら、トム・フォードって、あのトム・フォードかよ。

 コリン・ファースの繊細な演技も相まって非常に静かながらも、どこか感情の動きを強く感じる。とはいえ、流石に話が動かなすぎる。展開に起伏が全くなく、常に哀愁と寂しさが漂い続ける。せっかく60年代における少数者としての恐怖、そして孤独に対する恐怖を講義で示しているんだから、もっと恐怖演出があっても良いかな。

【金曜レイトショー】

シネマトゥデイが金曜の23時からYoutubeで始めた名作映画の無料公開枠。ありがたやありがたや。

オズの魔法使

オズの魔法使 (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

 超古典的名作。カラーと白黒の差、オズの世界での色々を考えるとドロシーの夢の中ということでいいとは思うのだが、意外と解釈に差があるらしい。

 手に入れたいものはすぐそばにあったんだ、はもう使い古されすぎて飽きるぐらいのメッセージだけど、初期から訴えていたんだな、と思うとやはり尊い

 ただ、繰り返されるテンポの良くない出会いに、これは時代だから仕方ないが明らかにスタジオセット感が出てしまってるところで現実を越えた夢の世界の話に見えないのがどうにも…

ロビンフッドの冒険

ロビン・フッドの冒険 スペシャル・エディション [DVD]

WATCHA3.0点

Filmarks3.1点

 まさにエンタメ冒険活劇、といったところだが、流石に時代を感じる。

 カラフルな色使いや音楽は素晴らしいが、あまりにも無策で蛮勇なだけに見えるロビンフッドのヒーロー像もうなづきがたいのと、何よりも稀代の弓使いなのに殆どフェンシングに近い剣戟がメインなのがどうしても勿体ない。もっと弓矢を上手にアクション設計に使ってほしかった。

 あとはこれも時代、血を出せないからだが、それによって勝負に命のやり取り感が無いのも事実。特にラストのタイマンチャンバラ以外は死んだのか、気絶したのか判別できないので緊張感がどうもでない。