抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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超平和バスターズ第3弾!「空の青さを知る人よ」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 超平和バスターズの劇場最新作にして、恐らく「天気の子」以来の劇場アニメファンがどうなるのか固唾を飲んで見守っていた作品。やっとこさ見てきました。そして鑑賞してから気づきましたが、録画しておいた劇場版あの花と、前クールに岡田麿里原作の「荒ぶる季節の乙女どもよ」が見終わってない…。予習もこめて見なきゃいけなかったかな…

小説 空の青さを知る人よ (角川文庫)

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

(以下ネタバレあり)

 

1. 安全安心の超平和バスターズ

 「あの花」「ここさけ」でお馴染みの超平和バスターズの劇場作品ですから、ある程度のクオリティが担保されているだろう、と思って劇場には行きます。しかし、どんな制作陣や監督だろうと外れの時はどうしたって存在します。だから映画ファンは一抹の不安を常に携えて着席するわけです。この映画は、どんなに極小化されていてもゼロではない不安に対して、いきなりの安心を与えてくれます。冒頭あおいがベースを弾き始めるシーン。ここで秩父の風景描写とベースの運指を見せて作画の安定を確信させ、ベースの重低音とイヤホンを外しての生活音で音響も劇場仕様で万全と100点のアピール。そして、実際その通りに進むのでまあ安心。「海獣の子供」でも、序盤のハンドボールの描き方で勝手に安心してましたが、まあそれと一緒ですよね。正直、音楽関係は疎いのであおいのベースが上手いのかとかはよくわかりませんが、音響としては安心でしたし。まあそういう意味だと、もっと音楽シーンが欲しかったかな、という気もします。あと、秩父の風景、正直何シーンかは、写真かと思ったんですけど、どうだったんでしょう?最早ぼーっと見てるときだと区別がつかない域ですね…(だからこそ、ロング・ウェイ・ノースみたいな作品にも意味が出ますが)。

tea-rwb.hatenablog.com

 クライマックスに音楽シーン、というかちゃんと音楽フェスの本番を入れてほしかったのは従前の超平和バスターズの作品との比較が念頭にあります。「あの花」はじっくり時間を積み立てての最終回でやっぱり号泣しましたし、「ここさけ」は喋らない、という溜めからの解放でボルテージがグワーッと上がっていくわけです。その点、「空青」はエモーショナルな部分が少しわかりやすく誘導していない、というか。勿論、しんのがお堂を飛び出し、空に飛び出していくシーンでここですよ!という具合に楽曲もかかるわけですが、まあ言ってしまえばこの手法、凄く「君の名は」的で、且つ「天気の子」と絵が非常に似てしまって。私の中では、あっちの方がもっと心に来た、ということですね。あおいの失恋と慎之介の乗り越えを描く意味でも2人のセッションがあるフェス本番で締めて欲しかったかな、と思います。

2.完璧な声優陣

 まず始めに、宣言しておきますが、あおいちゃんは「HELLO WORLD」の一行さんと並んで今年のベストガール確定です。顔面ほぼ皐月様であんなに面倒くさいなんて大好きに決まってんじゃん、このヤロウ。太眉派じゃなかったのになぁ、「けいおん!」なら圧倒的に唯なのに。

 んで、肝心の演技なんですけど、そのあおいを演じた若山詩音さんがまず素晴らしい。正直子役からの声優パターンのようなんですが、存じ上げず。いやでも思春期の鬱屈と解放をしっかり表現できていたと思います。

 で、ですよ。その上をいく凄さがしんのを演じた吉沢亮さん。芸能人声優起用なのに、10年前と現在の2役やらせるのも凄い決断だと思いますけど、それに違和感を全く感じさせない演じ分け。そして歌唱も披露。どうでもいいけど、彼のデビュー曲扱いだった「空の青さを知る人よ」は弾き始めた瞬間あいみょんだ!と分かったので、多分私あいみょんさんの楽曲も好きなんだと思います。「さよならくちびる」で薄々気づいてましたが。慎之介・しんのは吉沢さんしかあり得ない、と断言できるでしょう。そういう意味では、あかねを演じた吉岡里帆さんは文句を言うような場面は一切なかったんですが、吉沢さんが上手すぎて少しだけ浮くように感じた場面もありました。いや、批判されるところは全くないですよ。まあ強いて言えば、やっぱり年齢感ですかね。30代の感じよりは若く感じちゃう声だったな、と。 

空の青さを知る人よ

空の青さを知る人よ

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 3.空の青さ

 この作品における「青さ」は、ダブルミーニングと考えました。タイトルやキーワードとして出てくる「空の青さ」。これは「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」から来る青さであり、秩父が盆地で巨大な牢獄だ、なんてあおいの発言とも重なる。そして、それは度々登場するあおいやしんの達の進路、将来を表すものでもある。何にも知らない、だからこそ何でもできる。そこには無限の可能性がある。だから、空を飛んだのは何にも知らねぇ、お堂という井戸から出られなかった昔のしいのと、あおいな訳ですよ。一見、大人、特に30代が中心の物語ですが、学生年代に対して「天気の子」同様に、背中を後押ししてくれる素敵なメッセージだと感じました。きっとどこかに「ガンダーラ」があるんすよ。

Gandhara - Aoi

Gandhara - Aoi

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  そしてもう一つの「青さ」は未熟さ、という意味での青さ。まあ、名前が表す通り主人公のあおい、そしてまだまだケリつけれてない慎之介、更にはあおいと行動を共にすることの多い正嗣もですかね。若いっていいねぇ、ってな感じの青さですよ。自分の未熟さを分かって、乗り越えて、成長して。やっぱりそれだけで物語が成立する。ただ、慎之介の成長とあおいの成長は少し違っていて、慎之介の成長は何を諦めないか、という成長であり、あおいの成長は、何を目指すかの成長。違う種類の成長を描くことで物語が更に多層的になっていったと思います。あ、でもプロなのにステージ前にシカの肉にあたって演奏できないベーシストとドラマーも未熟か。

 っていうか、あれですね、ここまで慎之介とあかねに関する感想が殆ど無い。もしかして自分はまだ若者のつもりで、そっちサイドからしかこの映画を見れなかったのかもしれません。中々現状、仕事しながら自分に折り合いをつけるとか、そういう段階に到達していないもので。もしかしたら、自分にもまだ何者かになれるのでは、なんて希望を持っているのかもしれません、とっくに捨てたつもりなんですが。 

葵

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