抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

名画座ふたたび。今さら見てきた「リメンバー・ミー」感想

 どうも抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今や遠い昔に思えますが、THE MUSIC DAYと題して名画座で見てきた「リメンバー・ミー」。いやー、ジブリやディズニー&ピクサー作品に向き合う決断をしたのが夏頃だったので春公開のコチラをスルーしていたわけですが、まあ見ておくべきなのは間違いないですよね…。といいながらも、実写は別だろ、とか思ってるのでくるみ割り人形は見に行かないと思います。

リメンバー・ミー (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

(以下ネタバレ有り)

 1.まずは短編。「アナと雪の女王/家族の思い出

WATCHA3.0点

Filmarks3.0点

 えー、まずはディズニー&ピクサー作品恒例の短編。あまりに流行っていて1人なのにちゃんと見に行ったアナ雪の続編というか、スピンオフ。調べたら間にもう一本あるんですね。存在すら知らなかった実写「シンデレラ」と同時上映だったようで。

 まあ正直言ってつまらなかった、というのが正直なところ。春公開の映画でクリスマスの話してるのもズレを感じますし、それきっかけで我が家には伝統がない、と気づいたエルサとアナ。それはわかるんですが、それもこれから作っていけばいい、という結論にならずに、オラフが2人を昔からつないでいた伝統だったんだ、というオチは結局本当に伝統、家族の思い出が無い人を完全に置いていく内容でまるで共感できず。まあこの辺は本編にも共通してきますが。

 完全にアナとエルサの為に走り回るオラフが可愛い、というだけのキャラ萌え的文脈でしか楽しめなさそうなもので、正直アナ雪を見に来ているわけじゃないので苦痛でしたね。なんかもう何本か作ってから「Frozen;Short Film Collection」とかでやってほしいです。

2.「KUBO」に似てる…?

 本作の舞台はメキシコ。死者の日なる日に写真を祭壇に飾っておくと、あの世からこっちに来てくれる、なんていう実際にあるらしい風習が題材に。そんななか主人公のミゲルは一族から音楽をすっかり禁止されているけど音楽大好きという子。

 まあこの時点で昨年の大傑作「KUBO/日本の弦の秘密」を思い出さずにはいられませんよね。決まりを破って冒険することになる少年。その傍らには楽器。同行者についてのいきさつもだし、お盆と死者の日、という共通項も。となるとどうしても比較してみてしまうわけで。少し気になるところが際立っちゃったかな?とは思います。

tea-rwb.hatenablog.com

3.死者の国描写

 メインとなる舞台の死者の国。それはそれは美しい描写の数々で流石ピクサーと言わざるを得ないんですが、正直こうして技術点の高さはもう当たり前になってしまったというか。そりゃ、そうだよね、で、話は?となってしまいがち。改めて美術が良かったことだけは言っておきたいと思います。特に白眉は演奏シーン。弦に触れる指まで完璧な描写で、ハルヒの文化祭のアレや!!とか思ってしまいました(完全なオタク)。

 それはそれとして。多分みんな言ってると思うんですけど、まず単純にあの世界のルールだと教科書に載るような大悪人は須らく生存し続けるわけですよね。ヒトラーしかり、アル・カポネしかり、ポル・ポトしかり。そんな世界のどこが素晴らしいのだろう、というのと同時に。

 あの世界の住人にとっての死は誰かに永遠に忘れ去られた時、だから死者の日に写真を飾ってほしいと思っているようなのですが、死者の日なのにあの世界の住人はパーティだなんだと浮かれまくっている。そっちでの楽しい日常をエンジョイするために忘れないでね、と言っているようにしか見えない。果たして何割の死者がちゃんとお供え物を取りに行き、子孫の生活を眺めていたのか。お供え物だけもらって帰ってきてフェス楽しんでるやつとか死んでまえ。いや、もう死んでるけど。

 それから死者の国からの出国条件が写真、というのも納得がいきませんでした。死者あるいは祖先、それを含めた家族を大事にしよう、ルーツを大事にしよう、という話なのに写真のない近代以前の祖先は大事じゃないのか、と。線引きがカメラの有無でええんか、と。中途半端な先祖崇拝は家族のルーツが幸せでない者にはさらなる地獄を生むだけなのでなんていうか、マイノリティに寄り添っているように見えて、幸せな人たちが作った映画だなぁと思ってしまいました。

4.現世パートの不可解さ

 現世パートも納得いかないことばっかり。正直言ってこのご時世に音楽を禁止すること自体がナンセンスだし不可能だと思うのですが、それは設定だから飲み込みます。ただ序盤の時点で、一族の仕事である靴を作っている時点で様々な生活音がしているし、それがまさに音楽になっている。どう頑張っても、(クワイエット・プレイスみたいな場合でなければ)日常は音楽で溢れているはずなんですよ。それを見て見ぬふりをしてるだけで。その欺瞞に例えば外から入ってきたこれまで音楽に触れていたはずの人(婿or嫁)が気づかないふりをして、あげく自分たちの末裔の夢を否定して靴職人になることが絶対善のようにふるまう。

 そこまでしていおいて、認知症のおばあちゃんが音楽を思い出しただけでみんな号泣して音楽はセーフになる、ってお前らの所業は消えてないし、なんだったら歌い出したお前も同罪だぞ!!という話。どう考えても感動して泣くことは出来ないですよね。ただの家族の地獄の中で、たまたま呪縛が解けたのに家族は自分らも被害者みたいなツラしてケロッと忘れてるって許せねぇって。

 

 短編と本編共通して、家族サイコー!!っていうだけの話で凄く幸せなひとたちの話でしかないよなぁと。ディズニーが寄り添うそぶりを見せて突き放してるのは、まあジェームズ・ガン監督の件でわかってはいましたけど、なんだかなぁと思います。