抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

私の10冊を紹介しておこうという話

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 私自身の持ってる価値観形成のような部分に多大な影響を与えるのがどんな作品を摂取してきたか、だと思うんですね。

 どんな映画を見てきて、どう評価したかはFilmarkのアカウントで確認できますし、映画に加えてアプリのWATCHAでは、アニメとドラマについても評価を数値が大雑把にはなりますが確認することができます。

 がしかーし!!本の感想もブログに上げているのに、私自身どのような本を読んできて、どんな本が好きなのか。推理小説が好きだという話を軽くしたぐらいだったので、今回は「私の10冊」ということで角川夏の100冊みたいな勢いで紹介してみたいと思います。気になる本があれば、是非ご一読ください。

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 表紙に騙されるなかれ、ラノベちゃうで!! 

 私が一番読んだ後あんぐり口を開けっ放しになった本ですね。自分の思考の殻を破るにはもってこいの一冊です。この10冊の中でも別格といっていいでしょう。

 事件(?)の幕開けはエログロ。そしてSFチック。ところが、そこから館モノを舞台とした事件の多重解決に。この時点でだいぶ頭は混乱していきますが、物語は時空や次元を超え、世界の中心とは、愛とは、と普遍的にしてミステリなのかすら分からない問いを放り込みながら、見事にまとまっていく。書いてあることの4割はたぶんまだ理解できてないですが、それで十分だと思ってます。そういうある意味で言えば奇書のような分類が出来る問題です。奇書って言っても、本物の日本三大奇書の一つ、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」は挫折した私が読破できるので問題ないはず!です。

 また、推理小説の世界では良く言われる清涼院流水問題に対する回答としてもこの小説は十全に機能していると私は思っています。この辺のことは結構めんどくさい話なので、気になる方はご自分でお調べくださいな…

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 この本も現代推理小説からは外せない名作です。今や、湊かなえが本を出せば潰れかけの出版社が息を吹き返すとか、吹き返さないとか。ミステリーの中では恐らくイヤミスと呼ばれる、呼んだ後の後味がいい意味で嫌なジャンルに分類できます。
 作品内では、それぞれの立場で告白がなされ、真相が徐々に浮き彫りになっていきます。そのやり口がまぁ秀逸。教師という概念への投げかけ、日本をつつむ「空気」を読む文化の行き着く先、メディアの報道のあり方、少年犯罪。いろんなモノに疑念を投げかけながら、主人公である女教師の行為に賛同できるのか。考えずにはいられません。

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 作家別で言えばNo.1に君臨しうる作家伊藤計劃の3編のうちの第2作です。体にWatch Meを埋め込まれ、健康であることを義務づけられ、他人の死に極度に敏感な高度医療社会。そこで起った集団自殺の背後に、かつて共に自殺を試み、命を落とした友の存在が見え隠れ、といった内容のSFです。
 日本のSFでは伊藤計劃以前・以後という分け方があると伊藤計劃ファンの日本放送アナウンサーの吉田尚記さんが以前仰られていました。言うなれば、それを決定づけた作品です。命、そして宗教、医療、幸福。こういった概念に対して延々と考え続けることを要求してきます。コレについては、映画化した際にも多少述べてるのでそちらも・・・(ネタバレ注意)

tea-rwb.hatenablog.com

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 現代推理小説ばかりの中で、古典といわれる作品ではコチラを推したいと思います。
ABC殺人事件」「オリエント急行殺人事件」などで有名な言わずと知れたアガサ・クリスティの作品です。ミステリーにおける型破り、えっ!?それやっていいの!?は大概クリスティがやってしまっていますが、その中でもトップクラスに物議を醸したのが本作です。驚きでいえば、かなりのもの。とにかくネタバレ厳禁な作品でございます。初めて読んだのが小学校高学年だったと思いますが、己の思考の視野の狭さに愕然とした覚えがありました。江戸川乱歩の少年探偵団ものを読破したばかりの小学生には怪人二十面相以外のわかりやすい敵がいない推理小説ってなかなかぶち当たらないもんですからね。この結末がアリかナシかはご自分の目でご確認を。

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 推理小説を除けば最も好きな作家さんが三崎亜記さんです。そのデビュー作が「となり町戦争」。三崎さんの作品は非日常的なある現象を日常の中に移築するのが大変に上手で、そこで生まれる微妙な違和感が何かを考えるきっかけを与えてくれたり、あるいは感動的な結末をもたらしてくれたり、あるいはブラックジョークのように毒のあるエンディングを迎えたりと、様々です。別作品ですが、「バスジャック」収録の短編「二階扉をつけてください」なんかも大好きです。

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 平板な日常の中のちょっとした違和感が「となり町戦争」であるならば、こちらはおかしさだらけの非日常空間がなぜか違和感なく受け入れられる作品。極めて暴力的で濃い味のエンターテイメント巨編といっていいでしょう。彼の傑作短編集「独白する横ユニバーサルメルカトル」と比較しても断然大衆よりなのでこっちのがオススメ。
 思わず吐き気を催す方もいるかもしれないというグロテスクな暴力描写と、思わずよだれがたれてくるかのような表紙のような美食描写が交互に殴りつけてくるので、端的にいってサイコー!!脳内麻薬どばどばって感じです。個人的には、アニメでの映像化や18禁での映画化をしてない事が不思議。登場する殺し屋のキャラも立っていて記号的に扱いやすいと思うんですが、平山さんが断っているんですかね…

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 第二次大戦下を舞台とした戦争小説です。上官の我儘のために食糧不足にも関わらず、卵1ダースを1週間以内に用立てる任務について、のお話になります。ナポレオン戦争を描いたトルストイの「戦争と平和」、広島原爆が描かれる井伏鱒二の「黒い雨」など、色々な戦争文学を読みましたが、一番読みやすくて、面白い作品でした。戦争文学が面白いとは、いかがなものか、という意見もあるかもしれませんが、そういう方は是非映画この世界の片隅に、をご覧ください。その映画がその批判への回答たり得ると思っています。
 一番の謎はこれがこのミスで発掘したこと。ミステリーではなく、戦争小説に青春要素を少しかけたみたいな感じの作品なんですけどね。

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 川上未映子さんといえば、「乳と卵」で芥川賞を受賞された作家さんですが、とにかくタイトルがもう個人的にツボです。「先端で、さすわ さされるわ そらええわ」とか、どんなセンスしてたら生まれてくるのか。羨ましい限りであります。
 本作「ヘヴン」はいじめを題材にしていじめの向こう側にある根源的な問い、それは善悪だったり、人間の強さだったり、弱さだったり。独特の文体でもあるのでやや読みづらいかもしれませんが、これも是非手にとっていただきたい、そういう思いが強めの一冊です。久しぶりに読み返していたら、中1の従兄弟に読みたい!と言われてプレゼントしました。また買わねば。。。

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 麻耶雄嵩さんはまぁこれが本当にすごい作家さんです。ちょうど春クールは月9で貴族探偵をやっていましたが、麻耶さんの本で一番なのは本作を推します。
 山奥の温泉。地域に根付く伝承。名家としきたり。巫女少女の探偵。なんですか、これ。100億点じゃないですか。
 2部構成になっていて、どんどん引き込まれていきます。麻耶さんはとにかく結末の意外性に命をかけているタイプの作家さんですが、後期クイーン問題に堂々と喧嘩を売るこの作品で騙される快感を是非。

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 こちらは短編集ですが何よりその1本目。「砂漠を走る船の道」が短編史上1、2位をコナン・ドイルの名作「赤毛組合」と争ってもいいと思える傑作です。設定をここまで説得力のある形で動機に生かしたものは初めてみたといっていいと思います。
 また、この作品は連作短編となっていて、最後まで読むことでスッキリできるようにもなっています。この一冊しか梓崎さんは文庫化されていないので(そもそも新作をなかなか書いてないようですが)、「リバーサイド・チルドレン」もどうか文庫化を…
 
 と、いうことで私の10冊をご紹介致しました。推理小説バカですね、コレ。次点で米澤穂信さんの「折れた竜骨」、倉知淳「星降り山荘の殺人」横溝正史「獄門島」も格段の傑作なので是非。っていうか、「獄門島」も追加で入れておかないと古典読んでないみたいですもんね。乱歩も横溝正史もルブランもドイルもクイーンも一通り読んでいるんですよ、本当に。
 さて、推理小説は1番面白い、凄いトコロを言ってしまうとネタバレになるので苦しいですね。書いてて気づくことができました。今まで人に本を薦める時の言動を振り返って反省したいと思います。