抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

完全な洋楽弱者が「イエスタデイ」を見てきた件

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 洋楽弱者が洋楽映画を見に行く特集、「ボヘミアン・ラプソディ」に続いておよそ1年ぶり2度目になります。

イエスタデイ(オリジナル・サウンドトラック)

WATCHA3.5点

Filmarks3.5点

(以下ネタバレあり)

 

1.露呈する弱者ぶり

 いやー、ビートルズなら流石に知ってる曲ばっかでしょ、と思った私が愚かでしたよ。全然知らねぇでやんの。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」等でもビートルズ特集は西寺郷太さんがやってくれてますが、如何せんタイムフリーではなくラジオクラウド派なので音楽は聴いてない。よく考えれば、サッカーではリバプールを応援しているっていうのに、リバプールの生んだ英雄を良く知らないのもアレっすね。

www.tbsradio.jp

 という訳で、見ていて正直困惑したのが改変後の世界のルール。ビートルズに関する一切の記憶や記録が消滅しているのは大丈夫です。まあ異世界転生ですよ。で、オアシス(マンチェスターシティのファンだから知ってる)がいないのもきっとビートルズの音楽の影響下だからなんだろうな、というのは分かります。あと多分日本にドリフターズが存在しなくなるので、娯楽が全く違うだろうことも。困ったのはコーラとタバコ、そしてハリー・ポッターが存在しないこと。バタフライ・エフェクトのようにいろんなものが消えてなくなるのも分かるんですが、イマイチルールが飲み込めない。この世界じゃ、ライブのMCとかでも下手に発言できないじゃないですか。だったらビートルズ以外は全く変わらない世界じゃなくて、もっと錯乱するぐらいの世界線変更があっていいような気がするんですよね…。とまあここまで書いて気づいたんですけど脚本家が「アバウト・タイム」の雑すぎるタイムスリップ設定の人じゃないですか。もうルールに文句言うのは野暮な気がしてきました。

 そして結構重要な役どころだったエド・シーラン。えー、大変申し訳ないがどれぐらいのポジションの音楽家なのか私は知ーらん。彼が噛ませ扱いになることで、ジャックの凄さが際立つんだと思うんですけど、それもイマイチピンとこなかったです。ええ。なんか当たり屋みたいな批判で申し訳ないです。

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2.継承する大切さ

 途中明らかに不穏な登場人物が2人出てきます。結局彼らは、ビートルズのことを覚えている2人であり、彼らはビートルズの音楽が無かったことにならないことに関する感謝を述べに来る訳です。「イエロー・サブマリン」だとか、ここで飛び交う固有名詞もわけわかんない状態でしたが、うん、果たしてそんな都合よくいくのかは疑問に感じました。だって、ビートルズは勿論4人での音楽があってビートルズでしょう。楽譜通りに歌って弾いたら誰だっていいなら、歌手やバンドに個性なんてないじゃないですか。まして歌詞間違えてるらしいし。こんなのはビートルズじゃない!俺こそがビートルズの継承者だ!という人間が出てきたりしても面白かったかな、なんてのは少年漫画脳でしょうか。

 ただ、この2人の言ってくれたこと自体はとても重要で、継承していくことって凄く大事な訳です。つい先日も、首里城が火災で全焼しました。じゃあこの世界から首里城は消えて無くなったのか。違いますよね。戦後に再建した時のようにそれぞれの心の中の首里城の証言を集めて再建を目指していくわけで、その語り継ぐ人がいなくなった時点で本当になくなってしまう訳です。まあ、あんま好きじゃなかった「リメンバー・ミー」理論なんでアレですけど。こういうこと言うとまた政治的かもしれませんが、戦争体験や被爆体験なんかは、日本において存在しない世界に突入し始めているような、そんな気もします。

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3.描き切れなかった守破離

 この映画、正直見る前に聞いたあらすじの先って、大概予想がつくじゃないですか。自分の中のビートルズストックに限界が来るか、自分で再現できない曲が出来るかでとにかくこれ以上は無理!ってなる。そこでどういう決断を下すかが物語のピークな訳です。

 そういう点で捉えると、いわゆる職人が技を身に着ける時の守破離の段階のうち、ビートルズという型を模倣する段階、そしてうろ覚えのせいで多少破ったり、時代性やアルバムの作り方によって理解されないことで結果的に型を破る段階も経ているわけです。そうしたら最後、自分の言葉で曲を作る、完全に個のアーティストとして独立できる「離」の段階で行われるだろう限界の告白と決別が大事だと思うんですよ。

 そこでこの映画は逃げてしまった。違う人が作ったといい、ビートルズのメンバーの名を読み上げ、無料アップロード。ここまでは先人への敬意が保たれている。じゃあ、ここからアーティスト、ジャック・マリクとしてどんな歌を歌うのか。舞台裏に好きなのにウジウジしていたエリーまで呼んだ訳ですよ。「愛しのエリー」以外なら何歌ってもいいぐらいです。これまでの経緯のフラッシュバックなんかも入れっちゃったり。そこまでやって、全部伝えるのは歌じゃなくて演説!?めちゃくちゃガッカリしました。そこは音楽の力を使おうよ!リバプールの駅とかさ!色々あったよ!

 「ロケットマン」は本当に1曲も知らなかったので行かなかったですけど、洋楽弱者がシリーズ、今後もあるのでしょうか。それはハリウッドのみぞ知る…