抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

鞄を届けただけなのに「グレタ GRETA」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 無事TOHOシネマズフリーパスも最終日を迎えまして、今回のグレタで〆させていただきました。記事タイトルでパクらせていただいた「スマホを落としただけなのに」、見ていないんですけど続編やるんですね。予告編でして知りました。

Greta (Original Motion Picture Soundtrack)

WATCHA4.0点

Filmarks3.8点

(以下ネタバレ有り)

 1.至高のイザベル・ユペール狂喜乱舞

 この映画はそもそもの目当てがイザベル・ユペールだったんですよ。みんなクロエ・グレース・モレッツだったと思うんですけど。っていうのも、彼女の前作「エル ELLE」がたまたまふらっと見て衝撃的で。あんた還暦迎えてるんか、と。そんな彼女が若い女の子のストーカーになるって話だと聞いたらもうチェックせずにはいられない。配給さんグッジョブですよ。

 で、始まってみたらもうたまらない。クロエさん演じるフランシスが親切に鞄を届けてあげた相手がイザベル・ユペール演じたグレタのところ。お礼をひとしきり述べて、お礼のコーヒーを出すところまではいいんですよ。そっからの距離の詰め方がいきなり薄気味悪い。ドンドンドン!隣人が工事してるのかしら?の時点で、あ、これ隣人ちゃう、監禁や。とは察せるものの、まあそんなことは知らないフランシスは母を失った心の隙間をグレタで埋めようとしちゃって大接近ですよ。あーあ、と見ている側では思う訳ですが意外とあっさり正体がバレて、グレタは一気にストーカー化。こっからのイザベル・ユペールがもう凄い。単純に佇むだけで怖いし、レストランに客として押し掛けたときの狂いっぷり、レクター博士かと思う拘束具合には笑ってしまうほど。

 そしてこの一件を経て釈放後は自宅で麻酔薬を飲まされ、グレタの家で監禁…かと思いきや夢か、で普通にエレベーターに乗ったらそのままどんどんエレベーターが落ち続ける…からのグレタの娘も閉じ込められた箱で目覚めるという現実との境界がどんどん分からなくなる。こっからのイザベル・ユペールはもはやミザリーとかを彷彿とさせる狂いっぷりで、フランシスが型抜きで小指を奪っても割と平然としているし、そこに注射針さして麻酔しているときの陶酔した表情ったら。探偵がフランシスを探しに来た際には寸前で首に注射器でスッっと。ショパンに合わせてステップを踏みながらの姿は「ジョーカー」で見た奴や!と思いつつ、完全にどうかしている人の芝居としては完璧だったと思います。

tea-rwb.hatenablog.com

2.ツッコミどころはあったものの…

 まあツッコミどころは多いですよ、正直。フランシスがこれだけ警察に通報しているんだから、確実にグレタの家に警察は訪れるべきだし、捜査があってしかるべきでしょう。グレタの怖さを知らしめるためにレストランでもフランシスが給仕し続けますけど、それはおかしいし、あといくら何でもグレタの鞄戦法は効率悪すぎですしね。

 それでもこの作品が成り立つのはまず、一応の形を綺麗にとっているから。初めにフランシスが訪れた時の状態を探偵が訪れた時に、監禁された立場から経験させ諦観を植えつけさせ、新たな犠牲者候補がやってきたときは、フランシスと全く同じ行動をグレタがとることで、前振りとして前回の犠牲者のサマンサの行く末が思い出されるようになってます。そこからの犠牲者候補もとい友人のエリカによるフランシス救出からのグレタを箱に閉じ込める行為によって、どんな子どもにも母親が必要だ、といっているグレタとの思想的決別を表現できている。同時にそれは、娘の喪失を忘れられないグレタと母の喪失を乗り越えて前に進めるフランシス、という対比にもなる。

 一歩間違えばB級映画にもなりかねないプロットだった気もしますが、イザベル・ユペールの個人的にはミザリー級の怪演と終盤の畳みかける構成のうまさで上手く見せていたと思います。同日公開がターミネーター白石和彌監督作なので埋もれてしまいそうですが、イザベル・ユペール劇場なので是非彼女の演技が好きな方は!!

 それにしても、ジェシカ・チャステインとかイザベル・ユペールに夢中な20代でいいのだろうか、と我に返りますね…。とりあえず、落し物はちゃんと警察に届けましょう…。