抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

ロビン・フッド蘇る。蘇る意義もアリ。「フッド:ザ・ビギニング」感想

どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。
 シネマトゥデイが毎週金曜日にYoutubeで版権の切れた映画を放映してくれる金曜レイトショー。先日は1930年代の「ロビンフッドの冒険」を鑑賞しました。そしたらなんとなんと、映画館ではロビン・フッドがかかっているではありませんか。

www.cinematoday.jp

 明らかにシネマトゥデイが合わせにいった事に気が付くまでだいぶかかったことはさておいて、早速フリーパスの長所、思いついたら映画館を実行してきました。タロン・エジャトンアーロン・エッカートアンセル・エルゴート、そしてジョエル・エドガートン。もう誰が誰だかわかんない。

ロビン・フッド ザ・ビギニング [DVD]

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

(以下ネタバレあり)

 1.王道英雄譚

 「ロビンフッドの冒険」を見たから行ったわけですけど、割と冒頭でロビンフッドの物語は忘れてくれ、なんて言われます。いやまあよく考えたら、本では読んでないので何がロビンフッドの物語なのかよく知らないですけど。

 んで、話としては十字軍遠征での重税に苦しむ民を救う領主にして義賊、ロビンフッドの物語、ということでは大筋はみんなが思うロビンフッドだったと思います。

 英雄譚ということでは、非常にオーソドックスだったと思います。裏切りもないし、わっかりやすい悪い奴が悪いシンプルな勧善懲悪もの。十字軍がアラビア側に資金援助していた話が史実かは知りませんが、それを明るみにすることでというわけでもない完全な革命の物語。あんなに暴力で解決するなら盗み出した証拠をこっそりと樽の下に隠したシーンとか削ればいいのに、なんて思ったのは秘密ですよ。

 ロビンフッドの特徴ととしては弓矢の名手であること。元々凄い名手なのかと思いきや、今回はジョンに特訓されて凄腕を身に着けた感じ。そして舞台が中世の鉱山や都市なので弓矢が得意としうる中・遠距離攻撃が出来ない状態。接近戦だから威力の強い弓を使え、なんて指示も飛んでました。その結果、現代のアクション映画の文脈で言えば弓矢アクションなのに、殆どガンアクションに近い演出になっていたように思います。中世らしくホースチェイスもありましたが、これも殆どカーチェイスの文法。勿論、現代的なガンアクションとカーチェイスの文脈を中世ヨーロッパが舞台の映画でもできる、という取り込み方自体は発見でしたし、フレッシュでしたが、手法はフレッシュでもアクション自体に新鮮味があるというほどでもなく。まあこの辺は馬まで乗りやがったジョン・ウィックさんを恨みましょう。

 こうした凄い弓矢アクションを主演のタロン・エジャトンは特訓を積んでノースタントで臨んだ、と聞くとこれまた凄いな、と思うんですがここでもジョン・ウィックが立ちはだかります。もうキアヌ・リーブスを恨みましょう。私はキングスマンシリーズを見ていないので、ここまで動けるとは思っていなかったし、ノースタントだと知った時は結構な驚きでした。

tea-rwb.hatenablog.com

 結末としては、フラグ通りにノッティンガム州長官だけは死んで、見事に死ぬ前には神に願ってズバッと捨て台詞言われる理想的な処刑はありましたが、大元の枢機卿や新たに州長官に任命された戦場で処刑を楽しんでいた同志なんかは始末せず、アラビア半島にお金が運ばれなかったことで民衆側がどんな勝利を手にしたのか、為政者側がどんな不利益を被って、十字軍遠征にどんな影響が出たのかはさっぱり語られず。ここはっきりさせておかないと、今回の戦いの意義がヒーロー「ロビンフッド」の覚醒以外に見いだせなくなり、立ち上がった大衆の立場が無いのでね。残念でした。まあヒーローのオリジンだし、しょうがないか、続編で…と思ったら、現代は”ROBIN HOOD”でビギニングなんてついてないじゃないか!勝手に続編構想まで込みの結末だと思ってたのに!なんなんだ!

2. ヒーローがよみがえった意義

 このマーベルやらDCやらのアメコミヒーローが氾濫している世の中で、新たに懐かしのヒーロー、時代劇的なヒーローをやる意味があるのか。これは問われなくてはいけないと思います。

 その点、この作品では教会や富裕層の分断と貧困層の反乱、大義で庶民を騙しての搾取・専横、権力の私物化。最初はライバルに思わせておいてのメンター兼バディにアラブ人を持ってくる脚本、明確に語られる宗教観の対立。ただ富の再分配を求める義賊なだけの物語ならともかく、ここまで並ぶとまあ現代的意義が生まれますよね。

 反乱する民衆が頭巾=フッドを見につけ、火炎弾を投げつける襲撃する様子は「ジョーカー」のラストにも繋がるし、当然そっちでも書きましたけど期せずして香港の覆面禁止条例にも思いを致さずにはいられない。

tea-rwb.hatenablog.com

  この映画において、本当に悪いのは誰なのか。実はチクリ先、即ち枢機卿も失脚するかもよ、なんて扱いだった英国王室すらも了承していたのかもしれない。そういう地獄も想定していたんですけど、そこまでではなかった。ただ、どうしても眼前の悪を倒しただけで、本質的な搾取の構造が温存されたままになっている。ラストでようやく登場したシャーウッドの森からフッドがどういう行動をとるのか、それは現実の我々がどう行動するか、あるいは行動しないのかと鏡合わせかもしれません。