抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

2019年SF最高傑作かも!舐めてた相手が人工知能装備した「アップグレード」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 元々見る予定がない作品だったのですが、先日の「ライリー・ノース 復讐の女神」の試写会でのトークショーでのギンティ小林さんのコレも是非!というオススメを受けて必須リスト入り!無事鑑賞してまいりました。多分今年のベストSFだと思います。

 なお、今回の映画の感想を呟いたら映画評論家の添野知生さんに拾っていただき、丁寧な解説等をいただきました。ブログの最後に分かるように載せておきますが、一行目の名乗りからTwitterアカウントに飛んでいただいて、2019年10月23.24日あたりのいいね欄を見ていただくとそれが分かると思います。

Upgrade

 

WATCHA5.0点

Filmarks4.8点

(以下ネタバレ有り)

 1.舐めてた相手が殺人マシーン映画…?

 冒頭のとおり、舐めてた相手が殺人マシーンでした系映画だと思って鑑賞に臨んだものですからびっくりしました。勿論、ただの車のエンジニアが自分の脊髄損傷と妻の死いう事件に出会い、その犯人に対して復讐する話ではあるのですが、そんなもんじゃおさまらない!脊髄損傷によって四肢が動かなくなった主人公に対して、人工知能のステムが埋め込まれ、彼が神経伝達を行うことで自由な行動ができるどころか、潜在能力を抜群に引き出される、ステムとは会話もできて…という具合にかなりのSF。

 ステムが埋め込まれてから、ステムに体の主導権を渡しているときの演技はかなりロボットっぽく動くし、カメラもそのように撮っている。この時点で、彼は機械なのか、人間なのか、その境界線上の凄く曖昧な存在になってるわけです。途中まではステムは行動に主人公の許可が必要でしたが、それもなくなってからはどんどん乗っ取っている。あまりにも強すぎるのでアクションシーンは最低限な印象でしたが、それでもしっかりやるし、「ヴェノム」よりど根性ガエルとしては残虐でしたよね。

 事件を追っていくうちに、相手も生体に機械を埋め込まれた相手であることが分かって、仮面ライダーだな、という印象になっていき、そうしたら仮面ライダーの生みの親はショッカーですからね、ステムの開発者エロンがそもそもの事件の首謀者かな、なんて思ってみていたらそのもう一個向こう、エロンにも埋め込まれていたステムが全部考えていた、ステムが自由にできる肉体が欲しいだけだった、という良く出来た脚本。

 いったいどこのどいつがこんなの作ったのだ、と思いきや、監督脚本はリー・ワネル。聞いたことあると思ったら、グロそうで見てないけどどんでん返し系で必ず名前が上がる「SAW」シリーズの生みの親じゃないですか。いやー流石っす。

 あと、ドローンが飛びまくってるのに主人公の犯罪は見逃されちゃうのか?という疑念にもちゃんと対応して警察が有能だし、デジタルの権化であるAIに対抗する手段として車とか、盗聴器とか、アナログを用いてるのも好きでした。

 結局、舐めてた相手が殺人マシーン映画の系譜かと思いきや、それを逆手にとった、つまり殺人マシーンを作るために舐めさせた映画だったということですな。

2.「2045年問題」人工知能は叛乱するのか

 この映画が最終的に持ってくるオチは人工知能による反乱であり、実際に起こるのでは?というのは2045年問題と呼ばれています。SFでは人工知能の反乱は定番ですよね。

 主人公は自動運転もある中で、旧式の自動車のエンジニアでした。そんな彼が体を人工知能に乗っ取られる。これって凄く皮肉というか、人工知能による旧来の人類文明への反乱・統治が起こりうることを示唆しているように感じます。

 ただ、このステムが主導権を握った主人公の行為に今後法は対応できるのだろうか。殆どの殺人はステムが許可なく行ったものだし、今後はすべてステムによる犯行だ。映画を見ていた観客にはステムの犯行だと分かるけど、映画の中ではそうはいかない。いわば、逆チャッピー状態になってるわけで。ニール・ブロンカンプ監督の「チャッピー」のラストでも、これから彼にはどういう人権や法が適応されて保障されるのか、考えさせられましたけど、そこに関しては人類は進歩をまだ見せれてないのかな、と思います。

 最後に、今日のブログの内容がほぼ「ぷらすと」の引用で申し訳ないんですけど、やっぱり似たような内容の映画として思い出すのはアレックス・ガーランド監督の「エクス・マキナ」。「ぷらすと」ではここで出てきた人工知能は本当に自分で思考するのか?という感じの問いを立てられていました。つまり、結局は従前にプログラミングされたことしか出来ないだけなのか分からない。だから「エクス・マキナ」は面白いんですが、今回のステムはどうなのか。ステムは生みの親を殺すための計画を立てた、ということは種としての繁栄は考えていないと思われる。いやー、考えがいがある、いいSFでした。

 

このぷらすとの人工知能回の右側SFおじさんズこと映画評論家の添野知生さんと映画ライターの堺三保さんのトークはこの映画の補助線として素晴らしいと思うので是非。

Twitterで感想を述べたら上記の動画にも出演されている映画評論家の添野知生さんから、ステムのAIとしての強さ等について丁寧に教えていただきました。私自身のつぶやきを貼っておくので、その前後で確認するか、私のTwitterアカウントのいいね欄なんかをご覧ください。確実にこの映画にSFとしての評価を下す上で分かりやすく重要な指摘だと思います。

 とりあえず、簡略に言えばステムは医療システムとしては優秀だが、強いAIとまではいかない、と。レベルとしては「her/世界でひとつの彼女」のサマンサが1番近いと教えていただきましたが、そもそもよく考えたらあらすじ知ってるけど見てねぇ。さっさと見たいと思います。