抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

超実写版!超リアルな動物が喋ってる!「ライオン・キング」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回は毎回月初めに出している見たい映画リストにちっとも入っていなかったディズニーの超実写版「ライオンキング」の感想になります。ついでにこの夏にできた池袋のグランドシネマサンシャインの感想も。ではでは。

ライオン・キング (オリジナル・サウンドトラック デラックス版)

WATCHA3.0点

Filmarks3.2点

(以下ネタバレ有り)

 1.超実写版!これはアニメなの?

 いやー正直言ってですね、最近は見るようになったとはいえ完全なジブリ・ディズニー弱者の私にとって、ここ最近のディズニーの続編&実写攻勢には嫌気がさしていて。1を見ているアナ雪2こそ見る予定ですが、既に今年も実写アラジンや実写ダンボ、年末のスターウォーズなどをスルーするので今回もその予定。ちょこちょこMCUも発表されているドラマの為に来るべきディズニー+でどうせ見放題だし、なんてテンションです。ところが、今回は知り合いから池袋で遊ぼうぜ♪的な数か月に1度降ってくる友人との映画チャレンジが発生したので「天気の子」の2回目と天秤にかけた結果で鑑賞してきました。

 話が長引きましたが、映画の評価。まずはなんといってもその画面の美しさに目を引かれることに言及しない訳にはいきません。超実写化と謳われ、出てくるすべての動物がまるで本物かのようなリアルなCGで描かれ、アフリカの実景で動く。祭りも待ち遠しい「水曜どうでしょう」の現時点での最新作「はじめてのアフリカ」でのセレンゲッティやンゴロンゴロ国定公園なんかを思い出す大迫力。殆どナショナルジオグラフィックとかBBCとかの特番みたいなもんですよ、こんなもんは。

 正直我々がここまでリアルな動物が喋るのを受け入れられるのって、どうでしょうのアフリカの野生動物を勝手に吹き替える大泉さん(ここまでは冗談)とか、ナルニア国物語第1章のアスランの映像化に成功しているから、だとは思うので時宜を待っての実写化になったとは思います。まじでアスランいなかったら、シンバとムファサが善には見えないですよ、後述しますけど。

 あまりにリアルすぎて超実写版と名付けるしかない現状ですが、語源(アニマ)を考えるとまあアニメ、という枠組みに入れること自体は致し方ないかな、と。ただ「アニメーション」ではない印象でしたね。

ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女(吹替版)

2.超実写版、だからこその苦悩

 改めて言いましょう。私はライオンキングをアニメ版でも劇団四季でも見たことが無い弱者です。「ハクナ・マタタ」という陽気な掛け声、大西ライオンさんの「心配ないさぁー」、東京ディズニーランドの大好きなアトラクション、フィルハーマジックでなんか流れていたご機嫌な曲。それぐらいの知識しかないです。

 そういうライオンキング弱者に言わせると、この映画ってリアルすぎて違和感の塊なんですよね。まず単純に表情が分からない。そして特徴がそこで掴みづらいので、キャラ分けが出来ないので個体識別ができない。声を持ったり、歌ったりする動物とそうでない動物の区別がされる理由が分からないし、じゃあ虫や草は喋らないのか?という疑問まで出てくる。ムーは暴走する低知能扱いだし。あと子どものうちはいいけどさ、大人になった動物たち可愛くない…よね?

 極めつけにして、冒頭、シンバの誕生を祝っているところ。肉食動物の後継者の誕生を草食動物が踊りながら喜んでいる。しかも話を聞けば別に最低限にしているから、みたいなワードロンダリングしてるだけで捕食関係はあるようだ。え、自分を食うかもしれないやつの誕生を喜んでいる…?「サークル・オブ・ライフ」と言ってはいるが、理科の教科書を思い出していただきたい。食物連鎖はピラミッドであり、その1番上の立場のやつがふんぞり返って「俺ら死んだらそっから草生えてくるから、草食動物食っていいのよ」とか、食われる側からしたらたまったもんじゃないですよ。ええ。絶対ライオンが善じゃねぇって。

 中盤、シンバが王国を追われて以降の新天地ではどうやらシンバは虫や草を食って過ごしていたように描写されていました。そこの時間のジャンプのさせ方はとてもうまかったのですが、成長したシンバは父のムファサに負けず劣らずの立派なたてがみを持つ雄ライオンに。立派に成長できたなら、その生態系システムを輸入するべきでは??少なくともムファサより善き王では??なんて。

 結局、リアルに描けば描くほど、おそらくアニメ版や劇団四季版なら視聴者も共犯関係になってたり色々で誤魔化せていた部分が野生・自然のものとなって映るので不自然さが際立って感じてしまったんだと思います。一緒に見た知り合いは、私が知る限り最強のディズニー強者なんですが、ちっとも疑問に思ってませんでしたし。

ライオン・キング (吹替版)

3.現在のディズニーがこれを描く意義

 最後まで見ての感想なんですが、これって2019年に作る必要のある作品だったのでしょうか。技術革新以外の理由が1mmも思いつかず、「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」と同様になんか「何故私を作った‥‥」的な悲哀を感じました。

 しかもところどころ、メッセージに現代的意義を感じないどころか、ディズニーという会社としては後退を感じます。そう、大量買収で映画界の覇権を握っているディズニーですが、今回想起したのはMCU

 アフリカを舞台にした、という意味だとまずは「ブラックパンサー」ですよね。「ライオン・キング」だって、「ブラックパンサー」同様に善き王だった父が死亡し、権力を奪われた子どもがクーデターで実権を奪い返す、という基本プロットは同じ。詳しくは「ブラックパンサー」の感想で述べているんですが、クーデターで勝利する主人公に手続き的正当性がないんですよね。主人公の正当性は彼の主人公性に委ねられており、極めて属人的なものになっている。しかも、今回の映画ではよりそれが個人的な思いと体制側の権力奪取の不正さで強調される。でもそんなの権力交代の常じゃないですか。暗殺で政権取ったって、歴史書を書いてしまえばそれは正当な王朝ですし。そしてシンバの勝利後は何のロジックもなくみんな幸せサイコー!でおしまい。「ブラックパンサー」で思った問題点はアップデートできていない、という印象です。

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 そしてもう一つ。王位継承といえば、ソー。その中でも「マイティ・ソー/バトルロイヤル」ではソーはアズガルドの土地を捨て、民と共に宇宙へ繰り出し、「アベンジャーズ/エンドゲーム」では地球に住んでいました。「ソー/ラグナロク」で繰り出されたメッセージは、国家とは土地ではなく国民だ、という共同体論です。何が国家やアイデンティティを規定するのか、難しいところではありますが、今回の「ライオン・キング」では王がスカーに交代してからは土地が荒廃し、動物も逃げ出している。ところがスカーもシンバも土地に対して非常にこだわりを見せ、そこにいたはずの国民たちのことはさっぱり気にしていない。うーん…。新天地での生活を否定して無理やり帰ってくるように仕向けたナラとか老猿なんかもがっかりの対象でした。割とトランプとかの自国中心主義に近いメッセージに後退している印象です。おたくら、「シュガー・ラッシュ」でヴァネロペはあんなことさせるくせに、なんで今回のシンバはそうなんだよ。新天地のままでいいのよー、でしょ。

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 4.池袋グランドシネマサンシャイン

 さあ、忘れてましたが、新しい映画感リポートですよ。アップリンク吉祥寺以来ですかね。

 とにかく大きな建物(とはいえ隣にサンシャインシティ60があるので見劣りはしますが)のかなりの階数が映画館という素晴らしい建物。ビルの外観はTOHOシネマズ新宿にも近いでしょうか。f:id:tea_rwB:20190902003910j:image

 売店とチケット券売機はラグジュアリーっていうんですか、高級ホテルのフロントみたいでテンションあがりまくり。f:id:tea_rwB:20190902003917j:image

 今回鑑賞したのは、独自規格のBESTIAというスクリーン。音は全然違ったな、という印象ですけど、そもそも普通のスクリーンとの比較が同じ映画で出来たわけでもないので、その辺は詳しい方に任せたいと思います。また、この劇場は日本最大のIMAXスクリーン持っているので、それもそのうち鑑賞したいですね。

 それぞれのシアターに移動するエスカレーターは下から上に上がっていくにつれて、映画の歴史をポスターで学べる楽しさ。リュミエール兄弟から始まって、過去の名作だらけのポスターなのでエスカレーターに乗りながら作品名言ったりして楽しかったです。それ以外にも、それぞれの階にも名作のポスターや原作本などのインテリアがあって、映画好きが喜ぶスペースづくりをすっごく意識している嬉しさがありました。f:id:tea_rwB:20190902003926j:image

 

↑この写真だと左上から「シェイプ・オブ・ウォーター」「ラスト・コーション」「ヴェラ・ドレイック」下段「グッドフェローズ」「時計仕掛けのオレンジ」「羅生門」。時代も国境も越えた名作ばかり。

 

 ってことでディズニー弱者の感じた「ライオン・キング」。いつかはアニメ版も鑑賞してみたいと思いますが、一緒に鑑賞したディズニー強者の知り合い曰く、かなり忠実だし、冒頭はカメラのカットすら同じだ、なんて言っていたのでどれぐらい誤魔化せているか、の勝負になりそうな気もします…。