抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

ドストレートな恋愛劇「きみと、波にのれたら」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

  3本立てのラストは湯浅政明監督最新作の「きみと、波にのれたら」です。一番の名作とも名高い「マインド・ゲーム」こそ未見ですが、「夜は短し歩けよ乙女」そして、今回もタッグを組んだ吉田玲子さん脚本の「夜明け告げるルーのうた」はしっかり見たし大好きでした。何よりNETFLIX配信アニメ「DEVILMAN crybaby」がサイコーだったので大変期待しておりました。

きみと、波にのれたら (フラワーコミックス)

WATCHA3.5点

Filmarks3.6点

(以下ネタバレ)

 

 1.リア充爆発…した

 100分を切る本編ですが、前半結構な時間を費やして描かれるのは主人公ひな子と港の恋愛模様。出会う前から始まり、少しずつ距離を縮め、恋人となるまでをこれでもかと丁寧に描いています。勿論、後にも登場する花火クソどもや、色々な前振りになってたり、ひな子と港のキャラの深堀りにはなっているんですけど、まあ甘ったるい。主題歌となったEXLIEのどれか(失礼)が担当した「Brand New Story」のMVっぽい感じで省略をいれることでMVっぽさも感じました。昨日感想を書きあげた「海獣の子供」の主題歌「海の幽霊」のMVは映画からMVに落とし込んでるように感じたんですけど、こっちはどっちかといえば「君の名は」的アプローチに近く、映画がMV化している印象。で、このストレートな恋愛描写にイライラしてリア充爆発しろ、なんて思う側になってしまったのが運の尽きでした。うーむ…

 

Brand New Story

Brand New Story

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2.喪失、そして乗り越え

 前半のイチャイチャパートが終わると港が亡くなる展開になるわけですが、正直言えば、予告編の段階で彼の死は予告されていて彼をどう乗り越えるか、がメインだと思っていたので前半が長すぎた気がするんですよね。勿論、その恋人のパートを長くすることでそこに共感できる受け手であれば、ひな子と同じだけの喪失感をもって港の死を受け止めて、彼女の精神状態についていけるわけですが、あいにくとその先を待っている身で、リア充爆発しろ、なんて思っていると喪失は共有できない。おまけに言えば、水の中に港が見える、と言い出してからのひな子を客観視点でも見せているので彼女の異常性を際立たせているのでそっちに感情移入しづらくしてるんですよね。そこは主観視点で突っ走ったほうが良かった気がします。

  明らかにどうかしてしまって水を携帯したりするなど、港の後輩山葵からも客観的に語られる奇行の数々を見ているパートは一番楽しかったかもしれません。狂気を感じるところとか、割と湯浅監督感がこの映画で感じられる数少ないパートというか。洗面所で港を呼び出して、水滴になって排水口に吸い込まれていく港のところが一番湯浅さんっぽいところだー!!とちょっと興奮しました。

 ただ、こうした喪失を乗り越える前の奇行状態も歌うのがトリガーのはずなのに割と歌ってなくても出てきてたり、設計がどうなってんのかよくわかんなかったのも事実。まあそうでなくてもずーっと同じ歌を、しかも明らかに最新のタイプの楽曲を昔懐かしいカセットテープ音楽として流され続けるので、歌われ続けてもアレですが。カセットテープ×EXILE TRIBEってのが現実味無くすんだよな…

 あと、ここで書くのもなんですが港とひな子が2人で歌うところ、ところどころ笑っちゃっていてヘラヘラしてんじゃねーと港の喪失を共有できない一番のポイントだったかもしれません。

 で、喪失を乗り越える鍵となるひな子が昔、港を助けたという事実。これ、ひな子が昔住んでた海辺に戻ってきた&港が昔助けられた、というエピソードが出てきている段階で観客の誰もが予想できる展開。正直そこをきっかけに乗り越えになっているのか、説得力は微妙だと感じました。

 乗り越えた瞬間を象徴するラスト。大きな水塊をサーフィンで乗りこなし、オムライスを綺麗に作れるようになったひな子。いや、確かに湯浅アニメの魅力の詰まった描写ではあると思うんですが、このタイプの水の描き方は前作の「夜明け告げるルーのうた」でも為された水塊表現だし、そこにフレッシュさはないというか。むしろ、アレによって水中の港の存在が客観視されてひな子がどうかしているいう状態を克服した象徴のイベントとして抽象的に捉えられなくなっちゃうんですよね。しれっと、港の妹の洋子も山葵も港に囚われている描写がされているのでその3人にだけ水塊や港が見えれば3人の中で蹴りをつけるイベントだっただけで港は妄想、で落とせたと思うんですが。ドストレートな恋愛劇だけにその辺も少しも捻らなくて良かった気がします。大体最後の舞台設定から都合よすぎで本当に脚本吉田玲子なの?と思ってしまいました。

あと声優陣。正直川栄さんは何やってもアベレージ高くて驚かされました。正直イラついた歌のシーンも、ご本人のはずの片寄くんより上手いように聞こえたし(ここは演出かもしれない、EXILE系はATSUSHIさん以外上手いとだったことないバイアスがあったかも)。あとは何と言っても松本穂香さん。ドラマ版「この世界の片隅に」のすずさんも好演でしたし、今回は声とキャラがあってたのもあり1番良かったですね。片寄さんは、うん、まあ向いてないのかな…

 湯浅監督はなんかこれから寡作だったのがバンバン新作がでるようなので次に期待したいと思います。