抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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誕生日には地下室旅行を「バースデー・ワンダーランド」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回取り上げるのは、クレしん映画最大の傑作と言われるオトナ帝国の逆襲の監督でもあります、原恵一監督の最新作にして、「勝手にふるえてろ」「ちはやふる」のせいで出てれば5億点の松岡茉優さん主演作「バースデー・ワンダーランド」です。一足先に試写会で拝見しました。

 こっから夏まで著名作家のオリジナル長編アニメが続きますからね、アベンジャーズゴジラを見てもまだまだ死ねません。

 ところで宇多丸さんが大腸憩室炎ということで、やっぱ3時間の帯とアーティスト活動ってしんどいんでしょうね…また今週のアトロクは緊急事態状態&山本アナの狂気聞きたさにインフルエンザウィークと同様にradikoで全部聞きたくなってまう。

バースデー・ワンダーランド オリジナル・サウンドトラック

WATCHA3.0点

Filmarks2.9点

(以下ネタバレ有り)

 1.特徴的なキャラデザと違和感。

 今回の作品、特筆するべきはキャラデザを含めた美術面でしょうか。

 キャラデザを担当したのはロシア出身のイリヤ・クブシノブさん。地下室からの旅に出てからの顔は割と分かりやすいんですが、現実世界の人間たち、とくに主要人物のアカネ、チィ、ミドリは割と混乱するというか、違和感がありまくりでした。特に主人公のアカネは小学生なんですが…見えねぇ!!学校での描写でランドセル背負ったりしてるんですけど、鑑賞時は完全に回想シーンだと思ってましたからね。松岡茉優さんの声も大人っぽすぎなのか、この先の演出的にも小学生には感じなかったですね。

 そして、それ以外の美術でどうしても気になるのは背景を含めた美術面。色鮮やかな異世界を旅するわけなんですが、正直ラストの儀式以外、どの場面でも決してフレッシュさを感じない。それどころか、既視感はあるし、細田守作品やジブリ作品、具体的には「となりのトトロ」にしか見えなかったアカネの家、「猫の恩返し」的なシーン、そしてラストの「千と千尋の神隠し」にしか感じない「振り返っちゃダメ」帰還。それでいいのか…。

2.説明と不手際。

 地下室を飛び出てからの旅はあまりに説明的すぎる錬金術師と弟子の台詞に辟易します。異世界に旅する導入は、わりとワクワクするんですよ。定番ではありますがひょんなこときっかけでどこかの世界の救世主だと判明してその世界へ。うん、ワクワクする。

 ところが、いきなり世界を救うのではなく、世界の色が失われているのを止めなくてはいけない、それはつまり水不足だ!という説明、そして眼前にやってきている謎の敵の説明。更に最初の村でのセーターのくだりのせいで、セーターを届ける、という別の仕事まで出てくる。結局それぞれのキャラクターが何のために、何をしようと動いているのかが全く分からない。話の推進軸が分からないまま進むので辛い。途中から地図が出てきたりするんですけど、だったら最初からそれを出して道のりわかりやすくしておいてよ、と。後出しでの演出の不手際が凄く目立ちました。

 説明で気になるのは説明との齟齬も。水不足が叫ばれ、雪国の宿では水がさも貴重なように扱われているんですが、スープや酒は普通に庶民が消費しているんですよね。調理には使えるけど飲料になる水がないの?生活用水がないの?水が無いと色が失われることがふわっとしか説明してないからこの辺が弱い。急げとか言ってるのに、急いでる気配もないし、そのタイムリミットの明示もない。細かいこと言えば、3日3晩かけて作ったとかいう錬金術のアレもすぐに作り直しちゃうし。説得力をどんどんなくしていくスタイルはなんなのか。

 あと、キーアイテムとして後ろ向きになると前のめりにさせられる首飾り。しかも自分では外せない。折角装着させられたのに、それが生きるのは一回だけだし、序盤のクレしん的ギャグで後退する訳なんですが、別にコレ振り返って前向けばいいじゃんと思わせちゃう訳です。個人的には、旅の冒険を経て主人公のアカネの後ろ向きが治ればいいと思うんですけど、それが他者による強制っていうのも少し納得がいかない。

 終盤にかけての大一番は雫切りの儀式。折角この儀式のときの画自体は凄く美しくてフレッシュなんですけど。これ担当の王子がいない問題、失敗したら死んじゃう問題、邪魔しようと悪役が井戸自体を破壊しようとする問題、このあたりが出てくるんですが、そもそもこの儀式がなんなのか全く説明されないまま進むのでなんでこれに間に合うように移動しないといけないのかもわからないんですよね。その上で、結論として雫切りの儀式に成功すれば万事OKらしいし、失敗したら王子の命を犠牲に水が行き渡ると。え、じゃあ水不足=色が失われる世界の危機って儀式の開催間隔が悪いだけの行政上の問題じゃん。そこに緑の風の女神ことアカネの存在って関係なくない?

 とまあ、正直脚本・演出には不満たらたらです。

3.原恵一監督に望んでいたこと

 正直クレヨンしんちゃんの映画や原恵一監督を定点観測していたわけではないので、これを語るのはお門違いかもしれないんですが、原監督の作ってきたクレしんって、最早理想と言える極めて上層の家庭じゃないですか。そこで家族の素晴らしさとかを描いてきた監督だからこそ、現代に家族をどう描くか期待していたんです。

 ところが、冒頭から出てくるのは一軒家で中庭にブランコのある家。「未来のミライ」的な匂いがし始めました。叔母さんは世界中旅して雑貨屋してるし、なんか明らかにクレしんと同じ階層の家族観なのかな、と思わざるを得ません。

 そのうえで決定的に絶望したのは異世界の描写。身も蓋も無いオチを言えば邪魔してくるいかにもな悪役が王子だったわけですが、彼は城を抜け出して近づかない方がいいと言われるような治安の悪い地域にも出入りしているわけである種貧困の実相を知ることになる訳ですよ。それなのに、うーん、そこまでそのキャラクターに影響を与えているように感じない。動機には影響してないとは言えないが、貧困地区での破壊収奪詐欺やってるので説得力はない。映画全体として誕生日プレゼントは異世界での冒険と少しの経験。後ろ向きになっても前のめりにやる勇気を持つと世界が広がる、そんな話のはずだったのだから知らない世界を知った王子にももっと変化が欲しかった。もっと言えば、魔法使いの弟子は何に共感して行動を共にしてるのか。ただの責任感で儀式の井戸ぶっ壊すタイプには見えなかったし。そこを描いてほしかったなぁ、という感じでした。