抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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イラク戦争総括映画。「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」「バイス」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 エンドゲームもいよいよでそわそわして参りました。最速上映はともかくとして、26日当日には観れるようにする気満々です。多くの映画ファンの方同様に複数回見ると思うので、平成最後の劇場も令和最初の劇場もエンド・ゲームかもしれません。

 今回は、イラク戦争を扱った2つの映画を。政治の舞台裏を描いた「バイス」と報道を描いた「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」の2本になります。

(以下ネタバレ有り)

 1.記者たち~衝撃と畏怖の真実~

記者たち 衝撃と畏怖の真実 [Blu-ray]

WATCHA4.0点

Filmarks4.1点

 「衝撃と畏怖」は9.11後の対テロ作戦名。だからそんなに悪い邦題ではないかと。

 これは、「バイス」にも言えることですが、実際の映像をかなり使っており、ドキュメンタリックにも感じるつくりになってます。「バイス」の方は逆にバラエティ番組感が出てますが。

 記者もの、ということで「大統領の陰謀」やに「ペンタゴン・ペーパーズ」同様、新聞社、自宅を行き来しながら、しっかり情報の裏を取ることを重視する。今回はそれが政策決定、即ちイラク戦争の開戦という政策決定のプロセスと同様であることが対比的に描かれている。しっかりと裏どりを行い、他社に抜かれてしまうこともあったが矜持を崩さず、真実を求めたナイト・リッター社。情報を集め、そこから記事を決定している。一方で、昔からの念願であるフセイン政権打倒のためのイラク侵攻という結論ありきで情報を集めていた政府サイド。情報のいいとこどり、なんて揶揄されてもいた。

 対比された対象は政府だけでなく、政府広報機関と化したFOXやNYタイムズワシントン・ポストについても。とはいえ、そこまで触れてないのでもっとそれで孤立していく感じがあれば良かった。ラムズフェルドから圧力はあったようだが、それを跳ね返すトミー・リー・ジョーンズがカッコよすぎで頼もしすぎて全然圧力に感じなかったし。

 あと、とても良かったのが新聞とは全く関係ないところで志願兵となり、負傷する青年と家族の話を入れたところ。これによって、あくまで報道は戦場に向かう決断をする政府広報ではなく、実際に戦場に立ったり、家族を送り出し、そして失う人々に寄り添うべきであり、今回のナイト・リッター社はそれを実行していたことが良くわかる。
 結局は9.11後のパニックに対して「アメリカ国民」が集団ヒステリー状態になってそれをブッシュたちが利用した側面が強く感じられた。そう、アメリカは問いかけられている。ベトナム戦争での過ちを忘れてイラク戦争で過ちを犯したのに、またそれを忘れかけていないか?と。

 欲を言えば、新聞社ものだといつも思ってしまうのだが、盛り上がるシーンが欲しい。緊張感と地味目な描写が続くのは仕方ないので、どっかでドカーンと。だからこそ、電話が鳴り響き勝利を分かりやすく伝えてくれる「スポットライト」が大好きなのだ。

www.tbsradio.jp

2.バイス

【映画パンフレット】 バイス VICE 監督 アダム・マッケイ キャスト クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、スティーブ・カレル、サム・ロックウェル

WATCHA4.0点

Filmarks4.0点

 イラク戦争自体よりも、イラク戦争にGOサインを出した副大統領ディック・チェイニーの伝記映画。酒に溺れ堕落していた男ディック・チェイニーが女の為に大出世、いったんは隠居生活に入り、エンドロールが流れかけるものの、ブッシュからの電話で副大統領に。凄まじい出世である。裏で操っていたのは奥さんだった!的な語り口もあるようだが、個人的にはケツひっぱたいたら思った10倍走ってコントロールできなくなっちゃった、みたいな印象。

 そして9.11。どうしてチェイニーがイラクを攻める決断をしたのか、というよりもどうしてそんな決断ができるモンスターが生まれたのか、ということに主眼を置いた政治風刺コメディに。アダム・マッケイ監督の前作「マネー・ショート」と比較すると画面のコチラ側に話しかけてくることは減ったが、それは前提知識の共有度がより高くなって説明の必要がないから。とはいえ、副大統領として組閣時のボードゲーム感だったり、遊び心は忘れていない。

 そして何より凄いのが役者の寄せ方。クリスティアン・ベールのチェイニーもだが、サム・ロックウェルのブッシュは凄すぎ。表情だけでなく馬鹿っぽさ、軽薄さもそのままでチェイニーを勧誘したシーンでの難しい話は何も分かってないボンボンさは完璧。ライスやパウエルも結構似ていたと思う。

 割と頻繁にメタファーで用いられていたのが釣り。エンディングもルアーだし。確か、魚を騙していいの?なんて質問が飛んでたと思う。映画内でルアーに飛びついたのは直接的にはブッシュということになってるが、そのルアー、9.11のことを指していて食いついてしまった魚が民衆ともとれるよね。この辺はビゴーの風刺画チックな見立て。

 そして、忘れちゃいけない謎の語り部の存在。割と衝撃的だった。全く予想付かなかった。

3.両者の共通項

 まずは現在の日本との比較。まずは当然のようにイラク戦争自体の総括がされていない、という事実。これを忘れちゃいけない。アメリカではエンターテインメントにまでなり、イギリスは詳細な報告書でイラク戦争の総括と失敗を反省している。他方、日本は世界でもかなり早い段階で対イラク戦争に同調した国。イラク特措法を作っての自衛隊派遣や金銭援助など小泉内閣は割と強引な手法をとっている。さあ当時の官房長官誰だっけ。

 と同時に。用語の言いかえで事態を見て見ぬふりすることや巨大権力を生む構造そのものは日本だって温存されてるよね?同じことがあっても風刺されない日本の不健全さ、それどころか田中角栄ブームが起きちゃうレベル。うーん。瀧さんをぶったたく暇あるなら、矛盾だらけの明治天皇の玄孫さんとかを笑いの種にしたほうが生産的ですよ。あ、生産的って言っちゃったね。

 次に、トランプ政権批判。当然「記者たち」で批判されている結論ありきの手法や都合の悪い情報を見ない、という姿勢は現在のトランプ政権に通底しているのは言うまでもない。それだけでなく、「記者たち」の感想で「アメリカ国民」と表現したのは、結局その際には当然イスラム系への迫害があったことが想像に難くないから。

 だからこそ、「記者たち」の劇中では記者の1人の奥さんが旧ユーゴの紛争経験者で、戦争からの分断、そして愛国心の末の国の消滅が語られている。フセイン政権崩壊後のISISのことだけでなく、アメリカの分断も示唆しているのは間違いない。「バイス」ではエンディングでISISによる死者の数もずばり表示されていた。政治を批評した作品においては、ファクトが重要で、それには数字が一番インパクトがある。ただ、忘れてはいけないのはこの数字を見てぼーっといけないことだなぁ、と思うことでなくその数字の算出がどういうプロセスなのか可能な限り確認することである。

 なんか、スパイク・リーの「ブラック・クランズマン」が説教くさくてもう少しエンタメに寄せてよ~なんて言ってたのに凄い説教くさい記事になってしまいました。反省。

tea-rwb.hatenablog.com