抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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圧倒的アニメ的快感を焼き付けろ!!「スパイダーマン:スパイダーバース」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 今回はアカデミー賞長編アニメーション部門受賞の「スパイダーマン:スパイダーバース」。

 「ヴェノム」のエンドクレジットで結構な尺が流れた時にイラっとして見ないつもりだったんですが、絶賛の嵐だし、面白そうだし…畜生、見てやるわ!と思って劇場に足を運んだら、この野郎、最高じゃねぇかよ!!

そうそう多分魅力は語り落としてるのでぷらふとbyParaviでこの記事公開日にやる宇野維正×添野知生「スパイダーバースを語る。」を見たほうがいいですよ!

スパイダーマン:スパイダーバース (吹替版)

WATCHA5.0点

Filmarks5.0点

(以下ネタバレ有り)

 1.こんなアニメ見たことない

 とにかくまず特筆すべきはアニメーションの凄さ。元々のマイルズ世界のピクサーチックな3DCG的なデザインだけでなく、ペニー・パーカーは日本のアニメ的、スパイダーハムはカートゥーン的、スパイダー・ノワールは白黒と全く異なるアニメ表現を同時並行で行われています。それに加えて世界の揺らぎの表現や、加速器動作中のマッドな映像まですべてを1本の映画の中に表現する凄さ、アニメ的快感は筆舌に尽くし難いです。

 そのうえで更にすごいのは一瞬一瞬を停止すれば、まるでアメコミを読んでいるような感覚になる1枚絵にしっかりなっていること。いや、アメコミを読んだことはないんですが、多分小さいころ読んでた「タンタンの冒険」とか「おさるのジョージ」と構図はそんなに変わらないと理解してます。それぞれのスパイディの登場時には、ちゃんと原典のアメコミの表紙とそれぞれの世界観の説明が完璧にアメコミでされるのでそこもまさにアメコミを読んでいる状態。あちこちに出てくる吹き出しに効果音を文字で表す方法なんかもコミックそのもの。いやほんと凄い。

 そして最も凄いのはこれだけ詰め込んでいるのに全く画面が渋滞してないんですよ。もしマイケル・ベイがこれ作ってたらどうなったか。考えるだに、ぞっとする。そのレベルで要素は詰め込んであるのに画面で何が起きているかは明確。もっとも、事前に字幕だとそっち見ちゃって勿体ないという指摘をいただいていたので吹替で見たのが奏功したんだと思います。

2.マルチバースと代替わり

 本作で多くのスパイダーマンが登場しちゃうのは多次元から呼んできちゃったからな訳ですが、これらは実際に全部原作がある訳で。映画会社の壁を越えられるならデッドプールも絶対出てきたはず。そしてこのマルチバース設定によって可能になったのが複数の同一ヒーローの登場。更にはヒーローの代替わり。青年ピーター・パーカーの死や壮年ピーターの登場、そしてマイルズのスパイダーマンとしてのオリジン。こうしたものを同時に描くことで何度もユニバースをリセットしてきたアメコミ世界を体現したり、ヒーローの苦悩を分かち合えるのは同じヒーローなんていうことも描けています。

 今回の映画はソニーが製作していますが、マーベルサイドからの発信があったと考えない方が不自然でしょう。「アベンジャーズ/エンド・ゲーム」で初代アベンジャーズの主要キャストである、ソー、キャップ、社長辺りは降板が決まっていたり示唆していたりします。実写のMCUでヒーローの代替わりを描く前にアニメーション、いろんなスパイダーマンがいることがこれまでの実写で認知されている題材で試すのは当然と言えば当然。「エンド・ゲーム」で主要キャストが死亡するのか、歴史改変で人物が変わるのか、誰かに引き継ぐ描写があるのか、その辺にもおのずと注目が集まります。

 おいとか言ってたら「エンド・ゲーム」の最新予告公開されちゃったよ、「キャプテン・マーベル」も公開日に見れないのに!!

 

 ついでに言えば、今回のヴィランは過去の実写に出てきたドクター・オクトパスが性別変わって登場し、更にはNetflixデアデビルの敵であるフィスクがキングピンとして登場。ネトフリのマーベルドラマはどれも打ち切られディズニーの配信サービスが待ち構えていることも含め、今後の期待も膨らみますなぁ…

3.間違いなくスパイダーマンの物語

 さて、アニメの凄さや設定の凄さはわかったとして、肝心の物語的にはどうなのか。基本的にはスパイダーマンの要諦をビシッと抑えたウェルメイドなものだったと思います。ひょんなことから蜘蛛に噛まれて手にしたスーパーパワー、でも自らの責任を伴わない行動で近しい人を亡くしたことで責任を自覚し、一人でも多くを助けるために奔走する。多分今までのスパイダーマンの話はこれで纏められるし、今回もそうだったと思います。明確に大いなる力には大いなる責任が伴う、というスパイダーマン共通のメッセージは届いているし、多くのスパイダーマンを登場させたことで、誰しもに皆ヒーローになるチャンスはあるんだ、ということが描けていると思います。

 青年パーカーはサム・ライミ版、壮年パーカーはマーク・ウェブ版のアメスパで出てきた名場面なんかもさっとやってくれてるし、スパイダー・グウェンはアメスパ2でグウェンが落下して死んだことを思わせる落下も見せます。そこでヒーローとしての自覚を持ったマイルズがちゃんと助けるあたりも大好き。スパイダー・ハムもカートゥーンだからあり得ないサイズのハンマー持ってても許されるし、ペニー・パーカーに関しては可愛すぎてもう言うことない。お菓子食ってんのもキュートだし、「ネクスト・ロボ」でも見た気がする造形のロボも可愛い。スパイダー・ノワールは怖そうで締める役割かと思いきや結構抜けてるし、白黒なのにカラーのルービックキューブにハマるのも素敵。えーと、つまりみんな大好き!吹替の声優さんもみんな完璧でした。

tea-rwb.hatenablog.com

 

 さて、しいて言えば、ヒーロー、特に最近のMCUなどのヒーロー映画で疑問符がついてしまうのは正義の問題でしょうか。

 今回は、果たしてスパイダーマンが本当に正義なのか。

 ただ、この問題もスパイダーマンは回避できる題材です。スパイダーマンは最後に添えられた通り、親愛なる隣人であり、1人でも多くの人を救うことを目的としたヒーロー。だから他のバースのスパイディを帰してあげることも、その後すぐに装置を破壊することで、多くの市民の命が失われる可能性を防いだこと、悪を倒すことじゃなくて、人を救うことが至上命題のヒーローなのでそこに一定の正義は担保されるのではないでしょうか。まあ、後はデアデビル見る限りはフィスクは割と絶対悪なので、その辺も解消しやすかったかもしれません。