抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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宮廷劇三重奏「女王陛下のお気に入り」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 昨日述べた通り、今週は見る作品が多いので見た傍から書いていかないと記憶が抹消されるのでハイペース更新です。公開される頃には「ギルティ」見てると思います。

 今回の感想は、アカデミー賞で最多ノミネートタイ、主演女優賞受賞の「女王陛下のお気に入り」。すっごい変な映画だったけど、すっごい面白い映画でした。大好き。しっかし、またFOXサーチライト。ディズニーが買っても変わらずにこういう良質な映画を作ってほしいものです。

女王陛下のお気に入り (字幕版)

WATCHA5.0点

Filmarks4.8点

(以下ネタバレ有り)

 1.歪みまくりの美しき宮廷劇

 舞台は中世イギリス。スペイン継承戦争に手を出してる状態で、実在のアン女王やマールバラ侯爵夫人、その従妹のアビゲイルの3人がメインキャスト。アン女王を演じるがオスカーを獲ったオリヴィア・コールマンマールバラ侯爵夫人ことサラを演じるのがレイチェル・ワイズで、アビゲイルを演じるのがエマ・ストーン。両者は助演女優賞でノミネートされていました。

 この映画を見ていて最も変だなぁと感じるのは、カメラ。部屋を映すときなど広めのショットになると魚眼レンズっていうんですかね?横に行けば行くほど歪んで映っている。これはこの部屋で行われる政治劇・宮廷劇が普通じゃないこと、そしてそこの住人たちが(特にアン女王が)明らかに普通でないことが示唆されています。

 示唆的な演出と言えば象徴的なのはウサギ。アン女王は17人の子を流産や死産で失ったということで、17匹のウサギを飼っています。それをわが子同然に可愛がっている時点でアン女王が若干精神的に危うい状態であることはわかるのですが、このウサギ自体がアン女王でもあるのです。映画の開始時点ではアン女王の性的パートナーも含めて、宮廷での権力はサラに集中しており、サラはアン女王のことをミセス・モーリーと呼んだり、かなりプライベートな関係。この時ウサギはそれぞれ1匹ずつ籠の中で、庇護下にあるわけです。

 これが途中で権力関係が逆転して、アビゲイルが寵愛を受けるようになるとウサギは籠から放たれ、床には糞が転がり、あげくアビゲイルはウサギを足で踏みつけるシーンまで描かれます。サラがいなくなり、あくまで女王陛下と呼ぶアビゲイルの天下になると、アン女王は付きまとわれることはなくなっても、孤独でかつアビゲイルの掌の上(っていうか、足の下?)の状態になったといえるでしょう。なんて思ってたんですが、ラストでアビゲイルはアン女王から喋ることを許されない召使い扱いに落ちてるからウサギはアビゲイルの方、という意見を目にしました。成る程、そういう考え方もあるのか…。

 権力関係の逆転の示唆で言えば、鳥を撃つシーンが繰り返されますがこれも印象的。当初はアビゲイルはサラに銃をならう立場であり、場の優位性は明らかにサラにあります。しかもこっそり目撃してしまったサラと女王の秘め事のことで揺さぶりをかけるとサラは銃口アビゲイルに向けて権力関係を明確にします。

 ところが、4幕目。何の気なしに話している二人ですが、よく見るとアビゲイルは喋りながら銃口をサラに向けているのです。場の主導権を握っているのはサラでしたが、明確にサラに対しての下剋上が見て取れ、この後アン女王に呼び出されるのがアビゲイルであることで権力関係の逆転がはっきりします。

 ことほど左様に、細かなところまで宮廷内における模様を描写しており、まさに微に入り細を穿つとはこのこと。ただでさえ美しい衣装にもこのことは言えて、サラの黒を基調とした衣装が議会での与党の服装やヘアメイクと一致し、野党とアビゲイルは白で統一されているのも印象的でした。

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2.名優三重奏

 監督、ヨルゴス・ランティモスの気持ち悪いぐらい精緻な演出や撮影は勿論最高なんですが、この映画を語る上で最も重要なのは勿論、オスカーにピックアップされた名優3人の奏でる演技のハーモニー。

 アン女王を演じるオリヴィア・コールマンは精神的な不安定さを表現するだけでなく、いざというときの女王としての威厳も完璧に表せており、更には自分を取りあうサラとアビゲイルを見る表情の演技なんかも至高。「天才作家の妻」を見ていないので、グレン・クロースとどちらが相応しかったか、という話は出来ませんが、少なくともオスカーに値したのは間違いないと思います。

 ただ、個人的にはアン女王は助演の方のノミネートで、主演のノミネートはエマ・ストーンだったのではないか、という印象を受けました。物語は彼女が宮仕えを始め、明らかにイジメられるところから貴族社会に復活するまでの物語であり、アン女王の前での顔と男に相対するときの顔、そしてサラとの対決に戦略を巡らせる場面など幾多の顔を見せてくれました。必要があるのかよくわからなかったヌードはともかく、彼女が凄まじかった印象です。まあ「ラ・ラ・ランド」で主演取ってるし仕方ないのか。

 最後にレイチェル・ワイズ。「否定と肯定」でのリップシュタット役が記憶に新しい(とはいえ2017年のベストだから1年以上前…)ですが、侮っていた相手に翻弄されてどんどん後手後手になっていく際の焦りよう、それでも捨てられぬ毅然とした貴族意識、そして確かにあるアン女王に対する個人的な愛。凛々しさの中に人間味がありながらも、一方で強気すぎたようにも見える演技もまた絶品でした。

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 あくまで個人的見解でエマ・ストーン主演だろ、とは言いましたが、正直なところ、全員主演でいいと思います。ついでに全員主演女優賞ノミネートで。勿論冗談ですが、レディー・ガガとかノミネートから外していいんじゃない?(「アリー/スター誕生」を見ていないが故の暴論)それぐらい誰かひとりが弱くても成立しない作品で、3人の名優が滅茶苦茶強く主張して激突しながら最高のバランスを保っていた作品だったと思います。