抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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何が資質を決めるのか「フロントランナー」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 見たい映画の公開ラッシュで嬉しい悲鳴が上がっているだろう今日この頃ですが、ファーストデイと公開日が被ったので公開初日に見てきたヒュー・ジャックマン主演の「フロントランナー」の感想です。

フロントランナー (字幕版)

WATCHA3.5点

Filmarks3.4点

(以下ネタバレあり)

 1.地味な作品ながらも…

 作品の舞台となるのは1988年の大統領選挙の民主党候補者を選ぶ予備選。この辺の大統領選挙に関する仕組みは説明されないですし、事前の知識があったほうが面白いでしょうが、まあ選挙の面白さとかは触れないタイプの作品なので知らなくても問題ないでしょう。

 まず始めに1984年の予備選で主人公のゲイリー・ハートが敗北したところから。いきなり長回しで始まって、ハートが負けたけど認知されたことが重要だ、的なことを言って始まるこの部分はかなり好みだし、1988年の予備選で何故ハートがフロントランナー、即ちトップ候補となったかのちゃんとした前振りになってる訳です。自民党総裁選に出馬した若き日の小泉純一郎さんなんかのパターンですよ。たまたま鑑賞前日にオーソン・ウェルズ監督の「黒い罠」を見たからかもしれませんが、この長回しパートはとても良かったです。

 そんでもって文字による説明。1988年の選挙でフロントランナーとなった、という説明の後に文字が抜け落ちてタイトルだけ残る、なんていう手法もオシャレで好きでした。

 ここから物語は3週間の選挙戦を追っていき、当初は最有力候補だったハートが不倫報道から選挙戦撤退を余儀なくされるまでを描くわけですが、この作品、転落物。しかも大統領予備選の候補者の話。ということで、大統領選挙にすらなってない段階なのでピークの瞬間が微妙なんですよねぇ。だから結論を言ってしまうと正直地味。

 地味な理由としては例えば、振っといて何もない、が多いんですよね。不倫相手が家から出れない、家族がマスコミに囲まれて家から出れない、そういう事態をどう打開するのかと思いきや、その辺はしれっといつの間にか出ていました、で終わってしまったのでドキドキがどうしても期待より少なくなってしまいます。

 あとは、個人的に致命的だと思ったのが、国民の姿を殆ど描いていないこと。ハートの選対チームとハートの家族、そしてワシントン・ポスト紙とマイアミ・ヘラルド紙の記者たちがメインで描かれ、選挙や世論調査を扱っているのに肝心の有権者の姿が見えない。そのせいで、転落前のフロントランナーの段階でもそんなに凄くないように見えちゃって、転落の落差が小さく感じる。演出としては面白いと思ったのもあるんですよ。ピークに近い出馬会見を山でするっていうのは、あとは下山だけ=支持率は上がらないっていう暗喩とハート自身の型破り感を象徴していますし。ただ、転落物って、その落差で盛り上がるわけじゃないですか。落差が小さく感じたのは致命的だと思います。

2.政治家の資質とは。

 この映画が問いかけてくるのは、主に3点。

 まずは政治家の資質とは何か、ということでしょう。個人個人の政治信条や政治家に求めるものが何なのかでこの辺の評価は変わるとは思いますが、ハリウッドは基本的に民主党支持なのは頭に入れておいた方がいいとは思います。

 ハート自身は自分の下半身事情が選挙に影響することはない、と考えていたようです。また、不倫報道に関しては報道ではなく、ゴシップであると捉え、ゴシップは政界ではなくハリウッドのもの、みたいな考え方でした。それゆえ、パパラッチのような取材手法に対してもぶち切れていたわけです。

 日本でも育休を取ると言っていた自民党議員が不倫を指摘されて議員辞職するなんて話もありました。

 それから、これは1点目にも通じるところですが、マスコミに関しても、これでいいの?と問いかける部分があるでしょう。これも日本だと文春砲とかいって、くだらないゴシップを大きく取り上げるバカみたいな現状が広がっています。

 あくまで個人的な政治観としては、相手を傷つけるハラスメント行為や違法行為は勿論アウト。クリントン大統領みたいに職務中とかそういうのは機密保持とかの観点からアウトだとは思います。ただ、不倫っていうのは悪い事ですが、あくまで家庭内の問題であって、本人の政治的資質とは別だと思うんですよね。ハート議員に割と寄り添ってしまうタイプの考え方なんですけど、選挙って人気投票じゃなくて自分の声を代弁してくれる人を選ぶ主権の行使な訳ですよ。そこで不倫のせいで有能な人を振り落としていたら、無能で元気なだけの人とかがトップに立ってしまう危険があるわけで。ちゃんと政策聴いてその政策本位で投票しなきゃな、と思うのでこうした主張には基本的に賛成です。

3.メッセージに賛同できても…

 この作品の抱える政治的メッセージは十分に理解出来るうえで、おそらくこの作品が抱える問題点が隠れているように見える3つ目の主張が引っかかりました。この部分のせいで、この作品を説教くさい、と考える人が多かったのではないか、という印象です。

 その3つ目の主張というのが主権者はそのままでいいのか?という問いかけです。要は、ハート以上に明確なセクハラ発言や疑惑の残るトランプを大統領に選んだお前らそれでいいのか?という問いかけと同義だと思うんですが。

 目先の些細なゴシップや裏付けのないフェイクニュースに囚われて、本当に有能な人材を逃していませんか?という国民への問いかけ、気持ちはわかるんです。わかるんですが、民主党支持派の多いハリウッドが作ったと思うと、うーんプロパガンダにも感じる。その上でこの説教くささを決定づけるのが前述の劇中における民衆の不在。ハートを支持している国民の姿も見えないですが、彼を弾劾する国民も、あるいは擁護する国民も見えない。そのせいで、この映画自体も頭ごなしに国民を見ないで説教しているような感覚になってしまうのではないでしょうか。

 そういうわけで、この映画に関してはメッセージは理解できるし、賛同する部分が多い。ただ、単純に映画としては普通。その上で説教くさい、というのが結論です。奇しくも本編中でハートが語っていますが、すべては有権者が判断するんですよ。その有権者をもうちょっと信頼した作りでいいんじゃないかなぁ。