抹茶飲んでからマラカス鳴らす

見た映画、読んだ本、見たアニメ。そんな話を中心に。。。

PC画面にすべてが詰まった「search/サーチ」感想

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 月が代わる前に見たはずなんですが、すっかり書き上げるのが遅くなりました。2001年宇宙の旅を直前キャンセルして以降、いつにもまして体調が悪いんですよね…

 川崎フロンターレがJ1の連覇を決めて、鹿島アントラーズACLを制し、福岡ソフトバンクホークスが日本一になってスポーツ業界はオフシーズンに突入しつつあり、1年の終わりを感じます。

 今回は、なんだか同時期に公開の邦画「スマホを落としただけなのに」が設定が被ってそうで可哀そうになる映画「search/サーチ」の感想になります。隣に座っていた女性2人組が上映直後にこぼした「SNS辞めるわ…」が割とガチな感想だと思います。

Search/サーチ  (字幕版)

WATCHA5.0点

Filmarks4.8点

(以下ネタバレ有り)

 1.PC画面から出ない演出の凄さ

 今回の映画は上映開始がWindowsの立ち上げ、しかもおそらく購入したばかりのPCの起動から始まり、終わりはMacbookのシャットダウンで終わるという徹頭徹尾PC画面から出ません。しかし、それを忘れさせる素晴らしい演出でした。

 起動直後は家族各々のアカウントを作って子どもの成長、そして奥さんの病気から死までをアルバムや動画ライブラリーを駆使して見せる手法。お馴染みの草原の壁紙にはニヤッとした人も多いのでは。

 メインは娘の失踪について調査するパートになるわけで、そこで娘のことを実は何も知らなかった、という展開自体は良くあるもので、ぱっと思いつくのは中島哲也監督の「渇き。」とかでしょうか。ただその知らせ方が非常に上手く、twitterfacebooktumblrinstagramといったSNSだけでなく、生放送アプリ(日本だったらニコ生?)なんかも登場することで画面で飽きることなく見続けることが出来る。毎回ウィンドウを立ち上げたり、タブを追加して検索しているので情報が並列的に提示されており、とてもじゃないが全部の情報は読み取れないだろう(それが狙いでもあるのだ)。

tea-rwb.hatenablog.com

 ニュース映像などもYoutubeやニュースサイトを通して放送されるので、画面から出ることはない。最も、現地にPCを持っているはずの父親や捜査官がいる状況での画面なので誰のPCなのかわからない、ということはありますが。ついでにいうと、流石に登場人物を移さないといけないのでFacetimeを便利に使いすぎにも感じますね。

 果ては捜査段階では、Google mapにネットバンキング、名前を入れただけで電話番号が分かる個人情報保護法なんてどこ吹く風のサイトまで登場してくるので、単に捜査を見守りながら犯人を考える以上に冒頭の女性2人組のようにSNSへの恐怖を煽られることこの上ない。

2.鑑賞者への挑戦

 ミステリとしての話をすれば、犯人は実は捜査を担当していた刑事、ということで古くはアガサ・クリスティアクロイド殺し』から続く信用できない語り手シリーズのネタで、ある種鉄板ネタでもあります。ただ、今回の映画で凄いのはある一定の段階で見ている観客に対してもすべての証拠を提示していることです。そのため、主人公のお父さんよりも早く結論にたどり着くことさえ可能なのです。

 それはさながら有栖川有栖エラリー・クイーンの読者への挑戦状のよう。劇中でなされた担当刑事の息子の話なんて、ただ落ち込んでいるお父さんを励ますためだと思っていたのに完全に伏線。一旦のミスリードとなる弟の麻薬にしても、冒頭でしっかり提示している。ちょっと勘がいいだけだと引っかかってしまうのだ(ちくしょう悔しい)

 父が気づくきっかけもPC画面から出ない必然性がある。嫌味のように送られた葬儀の案内に使われていたフリー素材用のモデルからアカウントのおかしさ(いわゆるネカマ)に気づくなんていうのは、まさに舞台がインターネットだからこそかつ視覚的、映画的だからこそ可能なトリックであり、これを小説でやっても悔しさは半減だろう。こういった時代を反映したSNS等を生かした作品という意味では、「白ゆき姫殺人事件」なんかも思い起こさせる。っていうか、これをずいぶん前に書いていた湊かなえが凄い。

白ゆき姫殺人事件

白ゆき姫殺人事件

 

 

3.テーマを潜ませる見事さ

 この作品はミステリーでありながらも、見事に家族愛をテーマとして描き切っている作品でもあります。冒頭からのファミリーフィルムで仲睦まじい様子を見せていただけでなく、そのうえで母の死という出来事の乗り越え、そのうえでの父子愛というのを存分に見せつけてくれます。知っているようで知らない、子の心親知らず、ということを複数アカウントやパスワードで隠された人格を通して教えてくれる。と同時に、犯人側の様子が見事に主人公一家とも反転して見せている。これも素晴らしい。

 序盤で父親の飲み込んだ"Mom would be too"(ママもそう思っているよ)が言ってしまえば事件の原因の一つでもあり、そして新たな親子関係の構築にもつながる完璧な一言である。正直ここで号泣してしまった。

4.無機質の表現の可能性

 この映画、PC画面が中心で、いくらFacetimeを多用しているとはいえ、感情表現がどうしても乏しくなってしまう危険があるのは事実。この作品はそこを乗り越えているのも高評価の一因です。

 前述のとおり、父が母の死をあえて話題にしないように飲み込んでいることを、文章を作っていたものの削除することで表現したり、文字のタイプのスピード、打っては消し、で感情を見事に表していました。冒頭の部分で言えば、母親の入院が延び、帰宅がキャンセルされた様子がイベントで出てくるのも無機質なはずなのに感情を感じる。

 そして娘の生死を明かさないままニュース画面からメール画面に、という演出。これもPC画面のみで誰が使っているかがわからないことを利用して我々をハラハラドキドキさせてくれました。そのうえで、シャットダウンを選択するとアプリケーションが消えて写真で終わる。いやー、本当にすごい作品でした。

 正直言えば、あらゆる謎が解決されたと思ってしまうぐらいの出来なのですが結局なんで娘のマーゴはMacbookを置いていってしまったのか、だけ説明が無かったのが減点。正直、それさえなければ本当に手も足も出なかった可能性もある気がしちゃうので。