抹茶飲んでからマラカス鳴らす

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「検察側の罪人」は正義の対立を描いていたのか

 どうも、抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 夏休みは注目作が続きます。SMAP解散が無かったらなされなかったであろうジャニーズ史に残るパラダイムシフト。キムタクとニノの競演です。TBSラジオアフター6ジャンクションでのキムタク一大インタビューも素晴らしかったという事で、当然見てまいりました。原作は雫井脩介さん。『犯人に告ぐ』『火の粉』『望み』など、読みたいと思ってて手を出してない作家ランキング堂々の第3位です。(1位は佐々木譲

 どう予告見ても社会派なのに女子高生動員できる嵐ってすごいわ。両サイド女子高生でしたもん。聞こえてくる感想が、ニノんとこ、怖かったね♪だったので、あそんな感じ?とは思いましたが。まあ映画の楽しみ方は人それぞれでよろしいのです。

検察側の罪人 DVD 通常版

WATCHA3.0点

Filmarks2.9点

(以下ネタバレ)

 1.最高のジャニーズ競演。

 まずはどうしても気になるジャニーズ競演。あのキムタクが1人主演ではなく、ダブル主演の時点で大ニュースですからね、正直。

 と同時にキムラク×検察官というのは、どうあがいてもお化けドラマ「HERO」の影響を受けないわけにはいかないわけです。松重さんに八嶋さんまで出てるから猶更でございます。HEROの久利生はとにかく周りを振り回しながらも、事件にひたむきに向き合う自分の正義を貫いて事件を解決に導く、という役回り。いわば今回の役回りとは真逆。久利生という検事像を背負ってきたキムタクがこうしたブラックともいえる役に挑んでいる時点で、おっ、キムタクも考えてるのかな?なんて野次馬根性が出てきます。

 背景食いはこの辺にしておいて、演技の話ですが、さすがキムタク。キムタクっぽい、といわれるような演技もありましたが、それがしっかり役になっている演技。それでいて素晴らしかったのが大声の出し方。露骨に自分の立場が弱い時の挽回手法としての大声を使用していて、彼の演じる最上という人間の弱さが非常によく出ていました。

 ただ、キムタクを超える名演だったと思うのがニノ、二宮和也さんです。ドラマだと流星の絆なんかが記憶に残っていますが、まあ彼の演技は素晴らしかった。

 中盤までの最上に心酔し、その後姿を追いかけている後輩としての沖野がまずは優秀。まるで生き写しのように突如大声を出すことになる、松倉との対決シーンは迫真の演技。勿論、松倉を演じた酒向芳さんの受け止め方が素晴らしかったのは言うまでもないわけですが。

 そこから最上に対する疑念を抱き始めた後の最上との対決シーン。啖呵切った後のブツブツ言いながらの言った瞬間後悔みたいな様子が、机ぶったたいた瞬間椅子ぐるーんで後ろ向いた最上と対照的でした。

 それから、先ほど名前出しましたが、松倉を演じる酒向さんや諏訪部を演じた松重さんなど、悪人たちも素晴らしかった。特に松重さんはパンチラインを次々繰り出したこともさることながら、一発でヤバいやつだとわかる取り調べの際の両手の位置とその動き。完璧だったと思います。

2.演技以外のところでは…

 正直なところ、説明しすぎ、という感じを受けます。

 今年の名探偵コナンの劇場版もそうでしたが、法律用語とか、見ているこっちへの配慮もあるのはわかるんですが、そのままキャラクターに喋らせすぎというか。例えば、拘留期限の話とか。見ているこっちは知らないとしても、検事になって4年も経ってる沖野に最上が説明する必要まったくないんですよね。

tea-rwb.hatenablog.com

  説明しすぎと言えば、今回の作品は社会的なメッセージと言いましょうか、原田眞人監督が今伝えたいことに溢れていました。これもそのまんまキャラクターに言わせすぎというか。

 例えば、本筋にそこまで絡んでこない丹野の件。後述する最上の正義とも関連させてあるエピソードですが、丹野は文句として権力の腐敗を長々と述べていました。右翼団体の話、戦前回帰、マスコミ批判。勿論、今の日本がそういう状況にあって憂慮すべきなのは勿論なのですが、あまりにもダイレクトすぎというか。なんかもっとスマートな伝え方、表現方法がある気がしました。

 インパール作戦も大きな要素としてとりあげられていましたが、これも不満。無謀な作戦の代名詞であるインパールですが、丹野だけでなく、最上も、あるいは沖野だってこの路線を突っ走ってると感じる印象で、特に最上が制裁を受けないラストには、だったらインパール必要ないような、という印象。

 んでもって、ツッコミどころで無視できないのが、こういう作品になると必ず無能になる警察などを含めた組織。弓岡の名前が捜査線上に浮かんだ段階で仕事先を張るのは納得ですが、なのに自宅はスルーされていていともたやすく帰宅できる、というのはギャグでしかないし、それに付き合ってるヤクザもバカです。この警察の大ポカの前では弓岡のいた部屋の車のナンバーも控えずに部屋に入ったバカ2人も笑い話で済みます。

 ついでに言えば、逆上したことでなんとなくなかったことになってる最上と諏訪部の接触も見逃されているのはおかしなことで。反社会勢力と検察官が接触している時点でスキャンダルだし、最上と松倉の接点に気づかないバカしかいないのも笑ってしまう。

3.これは正義の対立なのか

 この映画で最も重大な対立は、松倉の追及できない過去の罪を私怨で追う最上と、只管に真実を追い求める沖野の対立になります。これがある種、正義の対立かのように語られているのが正直納得できなかったのが実際のところでした。

 何が正義なのか、ということは非常に難しい問題です。個人にとっての正義、国家にとっての正義、色々あります。いろいろある上に、その正義が人によっては正義でないこともあります。最近の作品であれば、シビル・ウォー/キャプテンアメリカアベンジャーズ/インフィニティ・ウォーはどちらも正義の対立を描いていた作品であり、どちらもの正義を肯定していました。(無論、サノスの正義はアレですが)

tea-rwb.hatenablog.com

  そういった作品と今回の作品の正義の対立を同義にとらえられるか、と言えば個人的な感想としては、否、と言わざるを得ません。

 最上の正義は、あくまで大学の仲良しごっこの範疇を出ないのがとにかくダメでした。松倉を罰したい、復讐の為に死刑にする、という一見法を重視しているように見えながら、裏でやっていることはそのために人を殺している訳でまるで矛盾しています。諏訪部に松倉の扱いを問われて「人殺しの依頼はしない」とビシッっと言っていましたが、人殺しのための拳銃、車、携帯、送迎をすべてしてもらっておいて人殺しの依頼はしていないとかちゃんちゃらおかしい。勿論、こうした矛盾があるのが最上という人間の弱さの表れだとは思うのですが、その時点で正義の旗のもとにはないですよね。

 更にラストでは、丹野が託した政治腐敗の証拠を社会に突き付けるために、自分を見逃すように沖野に言うわけですがこれもガッカリ。結局、独りよがりな正義なだけでなく、自分の半径5メートルから出ていかない正義なんだなぁとしか言いようがありません。

 最上の正義はまだあしざまに描かれているのでまだわかりやすいですが、最も違和感を覚えるのは沖野の正義です。

 沖野は、途中から最上の松倉への執着に違和感を抱いて松倉を犯人ではないと思う。ここまではいいんですよ。で、その先の真実の為に検察を辞めて松倉の国選弁護人に情報を流す。ここからもう一気に訳が分からない。守秘義務というのを知らないんでしょうか。あげく証言台にまで立とうとする始末。流石にそれは止められたものの、その前段階からまったくダメでした。最上が法を捻じ曲げて松倉を罰そうとするなら、あくまで法の範囲内で戦うのが対立する正義ではないでしょうか。

 結局、最上も沖野も、自分の信じるより大きな善のためなら、小さな悪事は見逃す、というスタンスなわけです。一般人ならまあいいと思いますが、彼らは検察官。個人としての正義だけでなく、法の正義、国家の正義も背負う立場です。そんな彼らが2人揃って小悪党してて、これは正義の対立というより、個人思想の対立なのでは…?と最後まですっきりしませんでした。

 

 正直、橘と沖野の恋愛要素いらなくね?とか、松倉の家から最上歯ブラシ盗んでたけど鑑定にすら出してないし、荒川の事件のDNA残ってるとか言ってたっけ?とか、その他もろもろありますが、組織として崩壊しているところ、正義ぶってるだけでちっとも正義じゃなかったところがダメだと感じた作品でした。