抹茶飲んでからマラカス鳴らす

FC東京サポで鷹党のどうでしょう藩士による映画・アニメを中心とした感想ブログ

ワカンダフォーエヴァー!!のために必要なこと「ブラックパンサー」感想

 どうも、ワカンダフォーエヴァー!!(腕をクロスして戻す)

 抹茶マラカス (@tea_rwB)です。

 世界で記録的大ヒットで快進撃を続けるMCU最新作にして初の黒人ヒーロー「ブラックパンサー」の感想になります。

ブラックパンサー (字幕版)

WATCHA4.0点

Filmarks3.9点

(以下ネタバレ有り)

 1.最高に楽しい!ワカンダフォーエヴァー!!

 感想を一言でいえば、楽しくて最高!メッセージ性も抜群!といった感じ。大ヒットもうなづけるといったところでしょうか。

 まず着目すべきは物語の舞台となるワカンダ王国。科学の発展とアフリカ特有のシャーマニズムを中心とした部族的・呪術的信仰の融合が実に見事。王位継承の儀式やその際の色彩豊かな服装・装飾具は目で見ても楽しく感じられます。

 そして当然アクション。真っ黒なブラックパンサーのコスチュームだけに明るいところよりも暗いところでの戦闘が多かった印象ですが、釜山でのカーアクションを含め、戦闘能力的にはMCUヒーローの中でもかなり戦闘力に劣るように見えるブラックパンサーがしなやかな動きと、頑丈なヴィヴラニウムがダメージを受けた分だけそれを反動として使えるというギミックのおかげで大勢に囲まれてリンチされているように見えても一瞬で形勢逆転。爽快感もMAXです。

 音楽も素晴らしい。ラップあるいはヒップホップを基調としながらも、アフリカ音楽を感じさせる(詳しくないのでイメージさせた、という意味ですが)音楽の数々はテンションを爆上げしてくれました。サイボーグ009の時には必要なのかよくわからなかった作品イメージのラップも今回は曲的にも雰囲気的にもばっちりです。

 さあ、そして欠かすことが出来ないヴィラン。キルモンガーの活躍も見逃せません。王家となれば当然生じる血族の問題と、持てるものが世界に対してどう向かい合うのかという課題の両方を提示しながら、完全な統治者であり偉大な父の失政にショックを受けているティ・チャラに襲い掛かってきます。ヴィランとしてはMCUきっての名悪役といえるかもしれません。境遇等を考えても、言ってることは殆ど正論だし、弱い者の味方ですからね。武器供給以外の方法を思いつけば良かったのですが。

 まあ、そりゃストーリーが構造的に正直ソーと同じじゃんという気はしますが…

2.陛下が陛下であるために

 ここまで絶賛しておきながら、採点として万歳していないのは理由があります。

 それは、まさしくキルモンガーとティ・チャラの王位継承に関してです。

 最初の両者の決闘では、ティ・チャラは滝壺に落とされ勝負は決したかに見えます。ただ、確かに降伏していないし死んでいない。だから決闘は終わっていない!というのがティ・チャラ側の主張です。ただ、真っ当な政治機構であれば、キルモンガーが首飾りを授けられた瞬間、あるいは玉座に坐した瞬間にキルモンガーは周囲から国王と承認されたはずで、本来そこでゲームセットです。

 ここに今回の映画の問題があるのです。すなわち、キルモンガーとしては正当な手続きを経て国王に就任したにも関わらず、前国王が形式を無視した武力によるクーデターで政権を奪い返された、という展開になるわけです。

 これには統治機構として、極めて問題があるといえます。

 天皇機関説というのは皆さんご存知でしょうか。戦前に美濃部達吉が唱え処罰された学説です。簡単に言えば、天皇が偉いのは神の血を引いたからではなく、天皇という位にいるからである、というもの。生まれた瞬間から偉いという王権的なものではなく、即位したという手続きに権威の正当性を与えるというもので、現在の権力については一般的な考え方といえるでしょう。安倍首相は首相だから権力を持っているのであって、安倍晋三だから、ではありません。(無論、首相は国民の信任を受けた国会で選ばれるからその権力の正当性が保証されています。

 ところが、今回の映画ではナキアやシュリ(家族だから仕方ないが)は、国王だからではなく、ティ・チャラだからという理由で彼を支持します。国家の官僚・公務員としては当初のオコエのように玉座に仕えているという姿勢こそが正当です。そのオコエですらキルモンガーを裏切ってしまう。クーデターに参加したことになりますね。

 ここまで科学が発達している以上、倫理の発展も当然あることは考えられます。しかし人文学がここまで発展していないということは考えにくいように思います。少なくとも、科学的倫理を学んでいるはずのシュリや世界の統治機構をスパイとして見てきたナキアは嫌だとしてもティ・チャラを助けることは正当ではありません。

 また、100歩譲ってティ・チャラの決闘継続を承認しても、その後の対決はブラックパンサー同士の対決です。これは民族としての手続きに反しているのでこの後正当な王位であるとはいえないのではないでしょうか…。

 結局のところ、ティ・チャラにこの展開が許されるのは主人公だから、につきます。そんな国家で彼の跡を継ぐ際に同じトラブルが起きた時の悪しき前例を作ってしまっていることになぜ気付かないのか。とても残念です。

3.結局ブリッジ??

 ここまで高度な文明を誇っているのに、倫理や人文学の欠損はあまりにも不思議だということは、前述のとおりです。ではなぜここまで高度な文明を設定しなくてはいけないのか。結局ここにMCUの持つ弱点、すなわちアベンジャーズまでのつなぎになってる感が否めないのです。

 例えば、ロス捜査官の脊髄損傷をわざわざワカンダで直すシーン。これはシビル・ウォーで脊髄損傷し、現在リハビリ中のウォーマシンこと、ローズの治療が可能になることを示したかったのでは。

 そして、あまりにも強大な敵サノスに対して、ホークアイブラックウィドウが戦えるのか、という疑問にもヴィヴラニウム製の防具等の装着で少なくとも一撃での死を防げるように感じます。

 あともう一つ。サノスが倒された後、現在のヒーローたちの多くは、契約満了に伴いスクリーンを離れると予想されています。ただ、MCU自体は続きますし、スパイダーマンブラックパンサーの第2弾の制作が殆ど決まっているといわれています。その敵はヴィヴラニウムを標準装備してくるでしょうし、さらに言えばスパイダーマン:ホームカミングのようにサノスの遺したものも利用してくるでしょう。インフレ化にさらに拍車がかかっていく中で、どうしていくつもりなのか気になります。

tea-rwb.hatenablog.com

 

 まあいろいろ文句があり、巷ほどブラックパンサー最高!!とまではいかなかったのが正直なところですが、めちゃくちゃ楽しいのは事実ですし、インフィニティ・ウォーまであと1か月ほど。2018年間違いなく最大の映画ですから楽しみにしたいと思います。